スケベ大王
プロローグ。
夏休みに入り、渚の気持ちを知った宗太郎。
夏休み初日、僕は新たな悩みが僕の中で生まれていた。
僕は気が付いてしまったんだ。
渚ちゃんが僕の事を好きだと言う事に。
だから僕は渚ちゃんの前でなでしこさんの事を思うと、渚ちゃんは何か不快なオーラを放って、後ろめたい気持ちになったんだ。
気持ちは嬉しかった。
でも僕はなでしこさんの事が好きだ。
きっと渚ちゃんもその事に気が付いていると思う。
だったら渚ちゃんと完全に距離を置いて居れば良いんじゃないかと思ったが、それはいけない気がする。
渚ちゃんには子供の頃から一緒で、良く僕のことをいじめっ子から助けてくれたこともあった。
そんな渚ちゃんを完全に距離を置いてしまうなんて僕にはできない。
だったら、渚ちゃんとはいつまでもお友達でいたいと思っているが、渚ちゃんは日に日に、僕との距離を強引に縮めて来ようとする。
そんな渚ちゃんの気持ちが嬉しいと言う気持ちと、心なしか無性に怖くなったりもする。
夏休み始まり、早速僕と渚ちゃんはある約束をしてしまった。もちろんその中になでしこさんも含まれているけれども。
その約束は近くの市民プールに行く約束だ。
僕はもうその準備はできていて、なでしこさんは台所でお弁当の準備をしている。
だから僕は渚ちゃんが来るまで、絵を描いていた。
出来上がって見ると、渚ちゃんとなでしこさんと僕が三人で戯れている所だった。
渚ちゃんが僕の事が好きという気持ちには答えられないけれども、僕は渚ちゃんとは一生お友達でいたいと言うのが理想だと思っている。
大人になったらどのような気持ちの変化になるのか分からないが、僕は誰にも言えないけれども、出きればなでしこさんと結婚したい。
でもまだなでしこさんの深い心の中は僕がどのように映っているのか、今の僕には分からなかった。
でもなでしこさんとは色々な事があるけれども、今はとても幸せだと思う。
何て色々と考えている家に、玄関から呼び鈴の音が響いた。
「はーい」
となでしこさんが玄関に向かって返事をする声が部屋に木霊した。
「おはようございます」
元気な渚ちゃんの粋な声が聞こえた。
僕は立ち上がり、部屋を出て、早速渚ちゃんの所に行って挨拶をしようと顔を出した。
「おはよう。渚ちゃん」
「うん。おはよう宗ちゃん」
凄く輝かしい笑顔で、それにとてもお洒落で、渚ちゃんは何かちょっと心なしか粋な女性に見えてきた。
「その赤いワンピースとてもお似合いですよ。ねえ宗太郎様」
なぜ僕に聞くなでしこさん。確かに魅力的だけど、僕が言ったら何かあるのに.もしかしてなでしこさん渚ちゃんの気持ちを気づいていて、僕と渚ちゃんが将来、その・・・。
色々と考えているうちに渚ちゃんは僕の目を上目遣いで見つめてきて、その感想を待っている様子だ。
だから、
「渚ちゃん。その赤いワンピースかわいいね」
すると渚ちゃんはパァーと表情を綻ばせ、天使のような笑顔で、そして照れくさそうに「そんな事ないよ」と謙遜しているのがはっきりと分かる。
そして準備も整って、早速三人で市民プールに出かける。
なでしこさんと渚ちゃんは色々と語り合っている。
本当に女の子って色々と喋るなあ。
二人は中の良い姉妹のように感じる。
市民プールは家から歩いてすぐの所だ。
到着して、料金を支払って、それぞれ男女に分かれた更衣室に入り、もちろん僕は男で、渚ちゃんとなでしこさんは女子の更衣室に入り、ここでいったん分かれる。
とりあえず僕はすぐに学校指定の水泳パンツに着替えて、二人と入り口付近で待ち合わせ場所でしばらく待った。
「二人とも遅いな」
時計を見ると、僕が着替え終わってここに来てから、十分は経過している。
「お待たせ」
なでしこさんの声が聞こえて、僕は振り向いた。
僕はなでしこさんの水着姿を見て、心臓が跳ね上がりそうな程高鳴った。
赤いビキニに、その整った体型に良く合っている。
豊満な胸に細いくびれに、腰にパレオを身につけている。
「何嫌らしい目で見ているのよ」
渚ちゃんの声が聞こえて、なでしこさんがあまりにまぶしすぎて、隣にいた渚ちゃんには目に映らない程だ。
渚ちゃんは学校指定のスクール水着をまとい・・・正直なでしこさんとは比べものにならない、まさに月とスッポン。
「早ちゃん。もしかして今私に対して失礼な事を考えていない?」
怒気を込めた鋭い視線を僕に向け、僕は圧倒され「そんな事ないよ。渚ちゃんのそのスクール水着、かわいいよ」
「誰も水着の事なんて聞いてないわよ」
渚ちゃんを怒らせて、その手が僕の頬を直撃して、目の前がフラッシュした感じだ。
ご機嫌斜めの渚ちゃんと共にプールに入る前に、なでしこさんが準備体操を促す。
準備体操をしながら、なでしこさんの水着姿がまぶしすぎて、本当にたまりません。
もう渚ちゃんがそんな僕にご立腹な気持ちも素直に受け入れます。
周りの男性もなでしこさんを見て、つい目が言ってしまうといった現象まで起こっている。
しかも、男女のカップルで男がなでしこさんに目が行って、その事が原因で喧嘩になってしまったカップルが一組居たほどだ。
魅力的すぎるのって、罪なのかもしれない。
準備体操が終わって、プールの縁側に立って、ゆっくりとプールの中に入ろうとすると、背後からけりを食らって、僕はプールの中にたたき込まれた。
こんな事をする犯人は一人しかしない。
プールから顔を出すと、腰に手を当てて、侮蔑な笑みを浮かべながら、渚ちゃんが僕を見下ろしていた。
「もう。渚ちゃん。何をするの?」
「このスケベ大王」
と罵りながら、僕めがけれ飛び込んできて、僕はとっさに逃げて回避した。
「君達、飛び込みは禁止ですよ」
プールの監視員に僕達は注意され、僕と渚ちゃんは「すいません」と謝った。
僕は飛び込んでないのに、どうして僕まで謝らなきゃいけないのだと不服に思い、渚ちゃんめがけて、水を吹きかけた。
「やったわね」
すると渚ちゃんは何をするのか僕の後ろに回って、背後から抱きしめて、バックドロップをくらい、水中にたたき込まれた。
苦しいけれども、渚ちゃんとこうして遊んでいて何か楽しくなってきた。
水面から顔を出すと、いつの間にかなでしこさんと渚ちゃんが一緒になっていた。
「なでしこさん。スケベな宗ちゃんを懲らしめてやりましょう」
「スケベって、僕はスケベじゃないよ」
「スケベじゃない。なでしこさんのさっきなでしこさんの水着姿に釘付けだったじゃない」
「うっ」なぜか否定できない。
「なでしこさん。こんなスケベ大王懲らしめてやりましょうよ」
「はい」
なでしこさん。肯定してしまうの?渚ちゃん曰く僕がスケベ大王だと言う事に。
「それっ」
なでしこさんが僕にめがけて水をかき揚げて、食らわす。
人間とは思えないほどの衝撃に、圧倒される。
「痛いよなでしこさん」
「これでも多少は手加減しているんですけれどもね」
なでしこさん恐ろしい。これでも手加減しているって・・・本気を出したら僕はどうなってしまうのだろう?
「それっ」「えいっ」
なでしこさんと渚ちゃんは僕をめがけて水をかける。
渚ちゃんは耐えられるが、なでしこさんの力はたまらない。
僕はそんな二人から逃げて、二人はそんな僕を追いかけて来る。
「ちょっと勘弁してよ」
何て言っているが、僕はこうして遊んでいて、正直楽しい。
夏休み初日から、何かいい思い出が出来そうで、これからの夏休みがわくわくとしてくる。
****** ******
休憩時刻になり、僕はなでしこさんと渚ちゃんに弄ばれて、ヘトヘトでベンチに横たわっていた。
「休憩時間が終わったら、滑り台が使えるから、宗ちゃん一緒に滑ろう」
渚ちゃんは先ほど水着の事で、ご機嫌斜めだったけれども、遊んでいる間に機嫌は直ったみたいだ。
「僕はもう疲れたよ」
「行こうよ宗ちゃん」
「ほら、渚さん。無理言うのは良くありませんよ」
なでしこさんに言われて、「むう」とつまらなそうな返事をする。
まあ、とにかく休んだら、渚ちゃんの要望通り、滑り台に一緒に行ってあげても良いかな?
休憩時間が終わって、僕の体力も回復して来たので、渚ちゃんの要望通り、一緒に滑り台に行くことになった。
早速僕たち三人は階段を上がって滑り台の頂上に立ったが、あまりの高さに足がすくみそうだった。
「早ちゃん。まさか怖いんじゃないの?」
渚ちゃんが嫌らしい目つきで僕を見る。
「そ、そんな事ないよ」
臆病者とレッテルを貼られるのは嫌なので、僕は虚勢を張ってしまう。
「宗太郎様、顔が真っ青ですよ、やっぱり引き返した方が・・・」
「大丈夫だって言っているじゃん」
滑り台から下を見下ろすと、本当に怖くて足がすくんでしまう。
「わっ!」
と声に僕はビビり思わず「ぎゃー」と悲鳴を上げてしまった。
脅かしたのは他でもない渚ちゃんだった。
そんな渚ちゃんはケラケラ笑って「宗ちゃんのリアクション面白い」と小馬鹿にしている様子だ。
堪忍袋の緒が切れそうだったが、ここで怒ったら、みっともないのでやめておく。
「ほら、渚さんに宗太郎様、そろそろ順番が来ますよ」
「はーい」
と渚ちゃんは明るく返事をして、僕の手を取って、滑り台の入り口に引っ張った。
「ほら宗ちゃん」
渚ちゃんに促され、僕はスタンバった。
ためらう僕に、渚ちゃんは僕の背中を強引に押した。
「ああああああああ」
もはや叫ばすには居られなかった。
滑り台は水が流れており、勢いよく滑り進んでいく。
滑り終えて、目眩がした。
「宗ちゃん危ない」
滑り終えた背後の滑り台から、渚ちゃんが勢いよく、滑り落ちてきて、渚ちゃんの足が僕の顔面にヒットした。
「大丈夫宗ちゃん」
心配する渚ちゃん。
「鼻血が出ていますね」
鼻にティッシュを詰め込んで、僕は長いすに横になる。
何か僕はプールに来て踏んだり蹴ったりな気がする。
でも良いかな。それなりに楽しいし。
それにしてもなでしこさんの水着姿は、本当にまぶしい。
何て思っていると、渚ちゃんが僕を見下ろしてきた。
「宗ちゃん。何嫌らしい顔をしているの?」
「いや、していないよ」
「心配して損した。宗ちゃん何てあのまま死んじゃえば良かったのよ」
さすがの僕も堪忍袋の緒が切れて「そんな言い方はないじゃないか?それに僕がいつ嫌らしい顔をしていたのよ」
「仰向けになりながら、ニヤニヤしていた」
そう言えば、僕はなでしこさんの水着姿を想像して・・・気がつかぬうちに・・・。
「ほら、嫌らしい事を考えていたんじゃない。このスケベ大王」
「し、してないよ」
「やましい事がないなら私の目を見なさいよ」
「別にしたからって、渚ちゃんに何の関係があるの?」
「ほら、していたんじゃない。これから宗ちゃんの事、スケベ大王って呼ぶね」
「もう渚ちゃん」
渚ちゃんの両頬思い切りつねって、
「何よ」
仕返しに、その延びきった爪で顔をひっかかれた。
「ほら、二人とも喧嘩しないでください」
なでしこさんが制する。
「スケベ大王」
「渚ちゃんの貧乳」
「このスケベ大王」
その爪を構えて僕に飛びかかろうとしてきたことに、僕も本気で渚ちゃんを泣かしてやろうと思って飛びかかろうとする。
「いい加減にしなさい二人とも」
なでしこさんが怒気を込めた声で僕と渚ちゃんに言う。
そして僕と渚ちゃんの頭に軽くげんこつをする。
なでしこさんに叱られたのは思えば初めての事だった。
げんこつはちょっと痛かったが、少しへこんだと言う気持ちがわき起こると同時に心なしか嬉しく感じてしまう。
さらにコンクリートの堅い所で僕と渚ちゃんは十分間正座させられた。
「二人とも、とにかく反省してください」となでしこさんは言った。
渚ちゃんに対する怒りの気持ちはあったが、隣に僕と同じように正座させられている渚ちゃんを尻目で見ると、偶然目が合ってしまい、渚ちゃんはそんな僕を見て、何か嬉しそうに微笑んでちょっと罰が悪いと言った感じで、舌を出していた。
渚ちゃんも僕と同じ気持ちなのかもしれない。
「さあ、二人とももう良いですよ」
僕と渚ちゃんは立ち上がり、渚ちゃんが、照れくさそうに僕の方を向いて「あのね、宗ちゃん。ごめんね」と素直に謝ってきた。
「僕もごめん」
何だろう。僕はまともに渚ちゃんの顔を見る事が出来ない。それは渚ちゃんも同じだった。
そこでなでしこさんが手を叩いて「さて、お昼にしましょうか」




