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ヒュタラノカ  作者: 村田 壮真
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弐幕〜対策〜

最近さむくなりましたね。未だ半袖半パンで過ごしていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

暫く空いてしまいましたが、また続く予定です

魔導科学軍事国家という体の国は、人均界には幾つか存在する。

レスピスの他に代表的な国家といえば、第一に「ヴァラクラ」が挙げられる。レスピスと最先端を競う好敵手の様な国間で、毎年開催される魔導科学博覧会は魔廊界や天旋界でも名の知れたものである。

入国審査にかかり、退国処分となる者は少なくない。違反行為を犯した者ばかりだが、抵抗する者は容赦なく排除される。排除に赴く兵士はいずれも精鋭、並のギャング組織ならば数人で壊滅させている実績もある。

しかし、相手がハガミとグランプルーヴァとなれば1国軍で何とかなるような物事では無い。仮に違反行為を働き処罰対象となった時、それ即ち【隣国連合軍】対【帝国潰し】となる事に他ならない。


「さって、と。ひとまず入れたのは良いけどだだっ広いなぁ!前に来た時はもっと小さい国だったのになぁ」

林立する特殊合金製の柱、コンクリート屋台、舗装された道、その他至る所余す所無く魔導が張り巡らされていた。だからこそ、全てが管理下。魔導の全てを司っているのはレスピス中枢の魔導管理棟16棟「アンコル・リズ」と呼ばれる場所で、その中心へ入ることが出来る者はこの国の魔導科学権威たるウィーター・ルティンのみで、魔導はもちろん、科学によるトラップが張り巡らされているため侵入はほぼ不可能である。

「人目の無い裏路地を探そう、北側特に」

北へ歩き始めるハガミを見て、グランプルーヴァが素っ頓狂な声をあげる。

「おおいおい、まずは情報からだろ?今のこの国どんだけ広いと思ってるんだ?」

最大、という名に恥じぬ広大な敷地面積を誇るレスピス。如何に2人が化物だとしても、目立たずに散策するには徒歩を用いなければならず、グランプルーヴァが頼りにしていた超範囲索敵魔術も制限下では範囲が酷く狭められ使い物にならない。

魔力を封じられたも同然な状態で不満そうなグランプルーヴァの意見を肯定し、2人は近くの酒場へと足を向けた。


軍事会議は長引き、終わりの予兆すら遥か遠くに見える様を見て、レスピス国王代理のレンパードは溜息を漏らした。話し合われているのは魔導軍事に関わる予算、税率の問題、魔導全学校に関わる教育方針等で、それらが果てしなく繰り返される。

レンパードの顔に浮かぶ怪訝なシワをものともせず水掛論は続く、と、そんな空間にまさに救世主ともとれる情報通達人が部屋に飛び込んできた。

「国王様、総帥殿、いらっしゃられますか!!」

レンパードと同じくウンザリとした顔をしたレスピス魔導軍隊総帥、キラファータが顔を上げる。もう眠りかけていたのだ。

「国王様はいらっしゃられない、私が代理だ、聞こう。いくぞ、キラファータ」


レンパードとキラファータは対照的な体躯をしていた。上層階位の家系に生まれ、その才能と頭脳回転から将来は高位な職に就くと期待を注がれ育ったレンパードと、スラム街を出身として、殺し合いと共に生き、期待する家族も仲間も無いまま育ったキラファータ。引き締まり、筋肉質なキラファータと、一般人と変わらぬレンパード。殴り合いをすればどう考えようが、考えまいが結果は誰にでも見えてくる。

しかしキラファータは魔導国家の魔導軍隊総帥でありながら、その魔導の使い方は防御魔導のみと極めて狭い。魔導を習ったのが23歳という事もあり、近接戦闘を主とするキラファータは手軽な防御魔導と、身体能力強化魔導のみを使っている。

対してレンパードの魔導センスは3歳の頃から頭角を現し、通常魔導は勿論、成人者が扱う魔導を粗雑ではあるが扱えていた。近い同世代ではズバ抜けたセンスを一心に磨き、遂にウィーター率いる直属の大魔導師「プラカ・ダビンタ」(希望へ導く12連星)へと選ばれた。

そんな2人の間柄がいいかと言われれば、実の兄弟の様なものである。何せ、スラム街偵察中にレンパードが見つけたのがキラファータなのだ。

キラファータにとって未だ違和感を感じる絨毯の廊下を歩くこと暫く、見えてきたのは質素な、素っ気ない木の扉である。その扉と同じく、中はとても簡潔に整頓され、大きな皇樹(数の少ない、希少な樹木。堅く、非常に耐久性に優れていて美しい断面をしている)の机と、ソファーが2対、窓から漏れる光に照らされて置かれているだけである。

そこにレンパードとキラファータ、その前に一礼して情報通達人であるキッサヌが腰を下ろした。

「っ、あぁ!退屈だぁ〜毎日毎日国王様も大変だな?あんな一進ニ退みたいな議論取り纏めるのが仕事なんてよぉ」

解放されたかのように身体を伸ばし、自然口調が出るレンパード。キラファータはそんな彼を見て笑いかけ、キッサヌに向き直る。

「それで、どうしたんだ?仮にもあれは国家最高会議なんだが、それを中退させてまで話さねばならない程の議案か?」

最早魔導軍隊総帥にまでそう思われている事に関しては置いておく。国家最高会議は年に2回、そのうちの1回は他国を交えたものである。長い時には10日を超えるのだが、本日は4日目に当たり議論が泥沼化する時期である。国王が今日に限ってよもや急用で遠方のパンガルザ国へ国賓として参列しなければならないというのだ。

「国王様には後程指示を仰ぎます、ですが、現在国内最高権限をお持ちなのはレンパード様であるために、先んじて御報告させていただこうと」

「ハァ......律儀なもんだねぇ」

こうは言っているが、レンパードは国王代理を任ぜられる人材である。キッサヌが神妙な面持ちな事に気付かないわけが無かった。

「まぁ......話せ」

その言葉に呼応し、キッサヌは手元の資料を手にした。

「今回の案件は、国内でもごく限られたものにのみ伝達いたしております。ことの重大さ故、御二方とてくれぐれも心中に止めておかれてください」

キラファータの顔が曇る。ごく限られたものにのみ、これはつまり軍事特捜部が動いているということでもある。

「まず26分前に西門を通過した2人ですが、こちらを」

と言って手渡された資料、それはレスピス西門の通過者記録表である。一部黒塗りにされていたその欄に、異常数値が飛び込む。

「28万?......97万!?阿呆か、魔廊界の七つの大罪じゃあるまいし、西門の魔導点検最後にやったのはいつだ?」

「先月後期だ」

キラファータが即答する。

魔導点検は年に3回行われるレスピス全魔導システムの異常検知である。150人を超える魔導師と、それを束ねる大魔導師の元行われ、優に1ヶ月を要する。

この直近に異常が発生したのなら問題だが、レンパードが懸念したのはこの異常数値でありレスピスの魔導システムではなかった。

「......こいつら2人は、どうしてる」

キッサヌは3枚程資料を捲る。それに目を通し顔を上げた。

「現在この2名に関しては、大魔導師のリキエーン様とガラキト様が監視にあたり、軍事特捜部が万が一に備えて感知されない距離を保ちながら尾行を行っております。莫大な魔力も、最大限に発揮出来ない以上、空間敵策魔導も使用範囲を酷く制限されている筈です」

レンパードが足を組む。

「直接的な制限をかけたわけじゃねぇだろ?この2人、特にグランプルーヴァともなりゃ魔導軍隊も相手どれる。制限なんざ無視することも厭わねぇかもな」

言われてみればその通りである。封印系や抑圧系の直接的な制限をかけていない以上、軍隊を潰せる実力者ならば容易に越えてくる可能性は十二分に有り得る。

「どちらにしろ対策は出来ております。キラファータ殿にはラッカルの先導をお願いしたいのです。」

ラッカル、レスピスの隠密暗殺部隊である。実力は折り紙付きで命令にも忠実であるが、性格面が酷く面倒であり指揮をとりたがる者どころか、歴戦の名将でさえ頼まれても嫌だと断る程である。

目に見えて難色を示すキラファータを、レンパードは横目で見ながら哀れみを向けていた。

「今回ばかりはいつもの処罰者と見なすことは出来ません。これ程の魔力を持ち合わせながら、何も企んでいないと考える方が難しい。レスピス総戦力を持ってして当たらなければならない事です、心中御察し致しますが、どうか」

「分かった......だが条件として後でコルカッパ(果実酒)を奢れ、レンパード」

「はいはい......え、はァ!?」

「違反を犯していない者を討伐するのは些か気が引けるが......やろうか」

立ち上がるキラファータに合わせ、キッサヌは伝達魔導で軍へ連絡を入れた。ただ1人、レンパードのみは何故自分が酒を奢らされるハメになったのか理解出来ずにキラファータを凝視していた。

様々なところで事が進むのはいいですね〜。互いの思惑が交錯するのは好きです

それだけです

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