零幕〜ちょっと人均界へ〜
※この作品には、殺傷や流血、性的な描写等、刺激が強い描写が多く登場します。
15歳以下の方々が閲覧する場合にはくれぐれもご注意ください。
※この作品に登場する描写において、現実世界への関連性は一切意図しておりません。
三針螺旋と呼ばれる世界
神族、天族が住まう《天旋界インフィニティア・マップ》
魔厳族以下16種族が住まう《魔廊界ディザスティア・マップ》
人間族以下39種族が住まう《人均界ヒスリティア・マップ》
三界はそれぞれの地質、界質を生かした生活形態を持っており、各界同士の交流は特に魔廊界と人均界の間で盛んである。
しかし、歴史を遡ること1万と700年前、三針螺旋と、ある一界との間で激しい火花がちらされた。
歴史上最大最悪の界戦【ヒュタラノカ】である。
最早記録は殆ど絶え、その戦を知るものさえ極少数となる。
〜とある場所ー
草原の様な、砂地の様な。光は差しているのか、いないのか。まるで分からない不思議な大地の上に佇む、小さな小屋の中で、2人は卓上の魔術文章を読むとも無く眺めていた。すすられる紅茶の香りがほのかに鼻を包み込む。
「ん〜......天旋界の奴ら、マジで戦るの?」
2人の内、少年の方が口を開く。透き通る様な黒、そんな不思議な瞳をした少年は呆れたような溜息を吐き、天旋界で使われる魔力文字文書「ピュセル」を払う。散った文字は、再び元の形に戻る。
「正直面倒くさいんだよねぇ〜、3つ一気に相手するの......」
静かに茶碗を置いた少女は、一息つく。
「当たり前です。こちら側はせいぜい1500足らず、むこう側は三界合わせて、少なく見積もっても1億は超えます。天旋界は本気で私達を消すつもりでしょう」
それを聞いて、ますます溜息が重くなる。何を思い立ったのか、少年は気怠そうな表情を消して椅子から腰を下ろし、小屋の外へ出る。少女もつられて顔を外へ向けた。
途端少年は左腕を右上から左下へ振り仰いだ。何故か、軌道の筋が空中に残っており、その筋を叩いて回転させた。4、5回程回ると、筋は少年の体躯よりも長い槍となった。それを掴み取り、少年はふわりと浮く。
「何をなさるおつもりですか?」
ん〜?と、どことなく愉しげな表情をする少年は「ちょっと人均界へ」と言って飛び去った。
残った少女は溜息を吐いて小屋へ戻り、ピュセルへ手をかざす。ピュセルは魔術師、魔導師、魔法師、もしくは全てを使い熟す魔総師が手をかざし、魔力を送ることで意思、思考などを文字とし、ピュセルにする事が出来る。
「......これで返事はよいでしょう、あとは」
少女は2つある部屋の内、寝室に入る。4つの寝床が並び、1つが盛り上がっていた。近くに歩み寄り、大きく深呼吸した後。
「いつまで寝てるんだこの飲んだくれ!!さっさと起きてピュセルを天族界のジジイにぶちかましてきて今すぐ早く!!」
「なぁんで俺なんすかァァァ!?」
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大きな揺れを感じ、鉛の様に重たい瞼を開く猫人の娘は、冷やかな暗闇に包まれた空間を眼に入れた。小刻みな揺れる荷馬車とそれに揺られる積荷からの音がを遮るように、少女を膝に乗せている龍人の青年が問いかける。
「気が付いたか?」
殺伐とした、静寂の様な低い声が耳に響く。その声の主の顔を見ようと身動ぎをした瞬間、右肩に激痛が走った。焼け付くような痛みに悶えを漏らす少女の背を、スラリとした青年の手が滑る。
「まだ、動くな。応急処置はしておいたが、俺はその知識が浅い。もう少しで俺の仲間がそんな傷口塞いでくれるさ」
いまひとつ理解していない様な目を、青年は優しい溜め息と共に見やった。汚れきってしまった少女を、精神まで戻せるかは解らない、が。
「アイツなら、まぁ、何とかするんだろうな」
曇天で隠れた、本来なら満開の月を透かすように、荷馬車の小窓から外を除く青年の瞳は哀しみとも、期待とも取れる様に揺れていた。
プロローグを最後まで目に通していただきありがとうございます。
まだ高校生で未熟な文章力とボキャブラリと想像力を絞り尽くして描いております。残り少ない霧吹きみたいな物です。
何気なく授業中に出来たキャラクター達に異常な愛着が湧いて、何とか命を吹き込みたいと頑張ってみようジャマイカ!という感じで出来上がった物語です。
もし続きが気になった方がいらっしゃれば、これからよろしくお願い致します!