第2話 覚えていないあの子
みんなが拍手を送るなか、僕は呆然としていた。
「じゃー、柚森さんの席は、あ!渡瀬君の隣が空いてるわね。柚森さんの席はあそこね」
「はい!分かりました!」
先生が僕の隣の空いてる席を指差した。
柚森さんが近づいてくる。
そして、隣の席に座った。
「渡......瀬?くんだっけ?これから、よろしくね!」
「......あ、あー、よろしく」
柚森さんは九年前と同じように僕にあいさつをする。
「おい、悠希。それはちょっと冷たくねーか、柚森さんに対して。あ、俺は柏田輝正!悠希とは中学時代からの付き合いなんだ。よろしくな!柚森さん!」
「うん!よろしくね!柏田くん!」
「私は芳野亜衣!私も悠希とは中学時代からの付き合いなんだ。よろしくね!柚森さん!私のことは亜衣って呼んでね。私も柚森さんのこと、若葉って呼ぶから!」
「うん!分かった!よろしく!芳......じゃなかった。
亜衣!」
「あのさー、柚森さん、九年前、僕たち河原で毎日、遊んでたよね?」
僕は思いきってその事を聞いてみた。
「どうしたんだよ!悠希、転校生には興味ないとか言ってたくせによ」
「輝正は黙っててくれ」
「そう......なの?ごめんね、その頃のこと、あまり覚えてなくて」
「そっか、ごめんね、変なこと聞いちゃって」
「ううん!全然大丈夫だよ!」
「もう授業始まっちゃうよ。先生がもうちょっとで来るから、静かに座ってた方がいいよ」
「そうなの?じゃ、またあとでね。渡瀬くん」
「うん、またあとで」
そして、授業が始まる。
授業中。亜衣がノートの端切れを渡してきた。
(どうしたの?九年前がどうとか言ってたけど)
と書かれている。
(九年前、僕と柚森さんは河原で毎日遊んでいたんだ。でも、柚森さんは覚えてないんだって)
と書いて亜衣に渡す。
亜衣がまた渡してきた
(へー、そうなんだ)
と書かれている。
(どうしたの?急にそんなこと聞いて)
と書いて亜衣に渡す。
(べーつにー、何でもないよ!)
と書かれている。なんとなく、不機嫌そうに見えるのは僕だけかな?
そこでちょうど授業の終わりのチャイムが鳴った。
休み時間、柚森さんの席に行こうとしたが......やはり、柚森さんの席の周りには人だかりが出来ていた。
そして、柚森さんはというとみんなに質問攻めされ、
対応に困っていた。今は無理かと思い僕は自分の席に着き、本を読み始めた。
昼休み、今日は輝正と亜衣と柚森さんの四人で、屋上に行って昼食をとった。
そして、今日も一日が終わる。




