第1話 九年ぶりの再会
僕は渡瀬悠希。青海学園に通う、高校一年生だ。
あれから、九年たった今でも、あの子のことが忘れられない。
今年も夏がやって来た。僕は夏が嫌いだ。むし暑いし、蝉はうるさいし。でも、まだ6月なので猛暑と言うほど暑くない。
「おはよぅー」
「おー、悠希、おはよぅ」
「なぁなぁ悠希!」
「何だよ!朝からうるさいなー。ただでさえ暑いのにさ」
「今日、うちのクラスに転校生が来るらしいぜ!しかも、女子だってよ!」
「へー、そうなんだ、まあ、僕にはどうでもいいことだよ。」
「何だよ、つれねえなあ!」
「だから、僕にはどうでもいいことだって言ってるじゃないか」
「あんたたちまで、そんな話してんの?」
「おー、亜衣じゃねえか、何だよ、悪いかよ」
「僕は全く興味ないんだが、輝正が」
「クラスの男子たちもさっきからその話ばっか。転校生が女子だからって浮かれちゃって、そんなに嬉しいものなの?悠希」
「嬉しいに決まってんじゃんか!女子だぜ、女子!」
「あんたには聞いてない!」
「だから、僕は興味ないって言ってるじゃないか」
「そっか」
この二人は、僕の親友の柏田輝正と芳野亜衣だ。
二人とも中学時代からの付き合いで、大体、決まって この三人で遊んでいた。
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
予鈴が学校中に響き渡る。
僕らも自然と自分の席に着く。
先生が来てホームルームが始まる。
「では、ホームルームを始めます」
「起立!気をつけ!礼!」
みんなが一斉にあいさつをする。
「今日はまず転校生を紹介したいと思います、どうぞ、入って」
先生が手招きした先、そこには......少し小柄な少女が立っていた。そして、教室に入ってくる。
「はい。初めまして、東京から引っ越してきました、
柚森若葉です!色々とわからないことがあると思うので教えて貰えると嬉しいです!よろしくお願いします!」
クラス中から拍手が送られる。一部の男子たちは
「かわいいー!」とか「付き合ってくださーい!」とか訳の分からないことを言っていたが、僕は違った。
「柚......森......若......葉だって!?」
その名前は、九年前、僕がまだ小学校に入って間もない頃、河原で一人で遊んでいたときに知り合い、突然、僕の前から姿を消した、女の子の名前だった。




