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リチウム  作者: 皐月朋弥
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第一話『躁転』

少年は物心つくのが遅かった。




幼稚園の事はおろか、小学校の事もよく覚えておらず中学校の事は嫌なことを覚えているくらいで良い記憶は殆ど欠けていた。


多分、その頃から彼はいつもうわの空だったのだ。




高校は地獄だった。


一人ではなく独りだった。


本格的ないじめなどはなかったものの後ろ指をさされるような日々が三年も続いた。

修学旅行は思い出したくないほどもっと地獄だった。



辛かった辛かった辛かった。


ただひたすら辛かった


その心の辛さを少しでも和らげるために彼は妄想へと潜っていった。


深く、深く。


彼の居場所はいつも心の奥深く。


深く、また深く。




いつか本当に妄想と現実がひっくり返るとは知らずに。






第一話『躁転』






デスノートが本当にあったらどうしよう?



(あったらいいよな、嫌いな奴はすぐ殺そう。ムカつく政治家とか芸能人も皆殺しだ。俺だけのハッピーな世界が作れる。ただ問題がひとつ。Lがいるとして俺は奴に勝てるだろうか?俺は頭が悪いからすぐバレるのではないか?まあいいか見つかったら見つかったでノートに自分の名前「……正宗!」)




「え?」




まただ。会話中に妄想するのは彼のいつものパターン。名を『正宗』という。正しさを宗とすると書くがとんでもない、無関心を装いつつ心の中ではとんでもないこと考えている、まあよくいるクズである。


「え?じゃないって、俺の話聞いてた?ぼーっとしすぎだろ」

「どーすんのよ進路」


このヒッピー風の優男。名を『虎徹』という。正宗の数少ない小学校からの連れで家も息継ぎ無しで行き来できるほどに近いため、こうして夜な夜な会ってはしょうもない会話を繰り広げている。


「あ、ああ……」

「やっぱり大学に行こうかと思ってる」


高校も卒業し名だけの浪人生としてふらふらしていた正宗は、まだ対して勉強もしていない割には聞かれるたびに大学に行くと吹聴するのであった。


「そうか」

「俺はデザインの専門に行くよ」


デザインというだけあって虎徹にはその心得があった。実際彼はセンスもよく、それが正宗の劣等感を煽っていたことを彼は知らない。


「……そういえば叢雲は?」

「最近連絡取ってないな」


叢雲。正宗の最大のライバル(と一方的に彼が思ってるだけ)である。叢雲とは幼稚園の頃からの中で中学はバスケ部のキャプテン。高校受験で慶應に合格。正宗とは比べ物にならないハイスペックボーイである。正宗はいつも彼の動向を気にしている。


「そっか、また3人でバカやりたいな」

「大井ふ頭で焼き芋とかな」




「ふう……」




「最近さ」

「ん?」


正宗が口を開いた。


「妄想と現実がごっちゃになる時があんのな」

「はは、マジかよ、ヤバいじゃん」


そういって虎徹は笑い飛ばした。

が、正宗は口では笑っていたものの、いたって真面目な目をしていた。




それから時が経ち、浪人1年目の冬。全く勉強してなかった正宗は案の定あっさりと大学に全落ちしたのだった。いや、一応日本大学の経済学部だけは引っかかったもののすべり止めには行かない、二浪までなら新卒でとってもらえるからもう一年遊べるという考えでもう一年浪人することにした。


つくづくボケた考え、浅はかな思考である。


「いやまいったね、しかし」


高い受験費を親に支払わせ、大事な一年を棒にふった結果呟いた一言がコレ。救いようが無いアレである。


「まあいっかもう一年遊べるドン!」

「スマブラでもするか」


ガチャ


「やあ」

「おう」


突然正宗の部屋のドアを開けて入ってきた男。名を『孫六』という。地味な容貌だが、大変真面目で常識があり、大学は明治で学力もある。正宗とは小学校時代からの幼なじみである。ちなみにこの突然奇襲してくる行為はそのまま奇襲と言って常に鍵の掛かってない正宗家名物のものである。正宗家に常識はない。


「スマブラしてんの?やろう」

「おう」


ガチャ


「ほい」

「おう」


もう一人入ってきた。名を『村正』という。端正な顔立ちを持ちスラっとした外見でバンドでベースを弾いている、が本人が若干天然なためイマイチもてないが大学も慶應だったりとやはりハイスペックである。正宗の周りは基本ハイスペックな奴ばかりだ(正宗を除く)正宗とは幼稚園からの旧知の仲である。


「アイテム無し終点ね」


本当はアイテム有りで戦場がよかったがそこは事なかれ主義の正宗。親友でも波風は立てないようにぐっと堪える。


「……」


三人はたまに顔を合わせれば特に何を話すでもなくゲームをしたりするだけだったが、正宗にとってはそれがとても心地良かった。


「最近さ」

「ん?」

「……」


正宗が口を開いた。


「妄想と現実がごっちゃになる時があんのな」

「へーぇ……」

「……」


孫六はゲームに集中しながら話半分に聞いていた。

村正は全く聞いてなかった。





浪人二年目の夏。流石の正宗も焦りだした。今更ネットで参考書を買いあさり、殆ど通っていない代ゼミのテキストを引っ張りだしては付け焼き刃の勉強法でとりあえずやってみるのだった。


日本の会社の新卒生度は浪人、留年2年以内までなら新卒として採ってもらえる、それ故に三浪となると経験者扱いとなり採用が厳しくなるのだ。


とにかくそれが正宗を焦らせた。なんの職業につくか決めてるわけでもないがとりあえず二浪以内に大学に滑り込まないと人生終わるとと勝手に思っていた。


正宗は極端に視野が狭かったのだ。




受験五日前になると正宗に不幸が襲いかかる。


愛犬のメグが死んだのだ。


死因はガン摘出手術の失敗によるものだった。

なぜこのタイミングで。

確かにメグは老犬だったが何も追い打ちをかけるように今このタイミングで死ななくても。

精神的に弱い正宗はこの訃報に打ちひしがれた。


そして受験当日まで全く勉強をしなかった。




受験当日。


青山学院大学の入試である。


一時間目は英語。



解ける。



何故か解ける。というか問題が簡単すぎる。新設学部だからか?


二時間目国語、古文がないから楽だ現代文だけ。現代文は得意だ。これも解ける。


そして三時間目、世界史。ほぼ全部解ける。九割五分?もっとか?なんで?


正宗は受験が始まって以来初めて確かな手応えを感じていた。


その時に正宗が考えたことがある。


この試験の成功はメグが与えてくれた奇跡なんじゃないかと。

もちろんそんなことは正宗のいつもの妄想に過ぎない。

しかし今回ばかりは正宗はそういった物を信じざるを得ないと思っていた。




そして妄想は現実に変わる。




青山学院大学社会情報学部合格。


最後の砦、落ちたら死を覚悟していた。しかし受かった、受かったのだ。死なずにすんでよかった。


受かった瞬間正宗は泣き喚いた。


長期間に渡る緊張からの解放。自分で命を絶たずに済んだということ。生きていることの実感。


そして確信した。


霊的存在。メグの奇跡。それらが自分を救ったのだと。


その確信が更に正宗の妄想を加速させた。




もう戻れないところまで。





苦労して入った大学は、つまらなかった。


それだけ。





ある日正宗は思いついた。




そうだ会社を建てよう。




名前は鉄風堂


仕事は革命業


日本を一度壊して再生させるんだ。


誰一人損しないハッピーな会社だ。




正宗は既にこの時壊れていた。





そして友人を一人一人会社に誘う


まず村正。


「いや、俺公務員になるから無理、それじゃ」


次に、孫六。


「現実的じゃないな」


そして、虎徹


「面白いと思うけどね」


最後に叢雲


「あなたは自分が革命家かなんかだと思ってるみたいだけどそれって単なるエゴなんじゃないの?」




何故だ、何故誰も解ってくれない。この完璧な計画を、俺の考えを、俺の表現をなんでいつもだれもわかってくれないんだ。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんdふぁjhふぃあうぃfじおえwjfぽじゃじょあjをgkjらgjrlkgじょえあjごgじゃえお;jOGPIfjぽわrgじょえgjwjがg;lgじょちじぇtごpkjg;えtじょあ;gじょえtgじょあgじょgじゃおごあぺjごあいrじょgkjてじょあjごえあkl;gjgkjっlgjごあえjkgjごあごあえいjごかjごえあじょklがじょkjgklgじゃれjがじょgklじゃおぎえjごあjごあjごあじゃおいgじょrjごあjごjごあ;えljg;じょあkじょぎじゃおえへあjがおwfじょいjごいじょてgじょあえじゃlがじゃおgjrjgぽqpgjqろgじょあgろかjgじゃがごいgじょえjgぇjかおじゃgっぁおぎじぇおgjklrjqklgじょqrjごあえjrl;かjgじゃjgじょあrjごあjろおklgじゃg;lkjgrじゃ;jgらgじゃgjろあgじょgらぽjごgじょえあgじょらえじょgじゃgj;あおgじゃえjごjといえjふぃpjhっといっjqjgおいgjろいえあjごごjrじょjgrじぇっgじおあいぎはpぎおいgじゃいgじゃjごいghごあいgjrjgq@09うq3う40403qじょjqごいjrgrjろいおじゃふぁkfjかっfljlkfj;あljf;ljfjがkljgjヵvkl;ああjっkっぁvlkぁl;j;あljぁjぁ;あlっじゃgjgl;kjlじゃlgkjlじゃlgじょいじょgじょgj;おれあjglkじゃlkまfmっvzmvま;まk;こえjgヵlmkぁkkぁjgklじゃklklgじゃjgjrぁgkmっkmlf;ml;kfヴぁkっじょあじょいrqjklrんgかlじゃjkl;じゃ;lfjljgl;あl;kjがlkjl;kjgじゃklじゃ;jglkjgl;かmvlmfmfvmfkml;っjろjら;ヵkljgkjmがm;あまgkl;あっじゃl;gljkfmk;lんjんてjtkぇk:;rmvmrぇkmじょげじぇwjpをk-039509じ45gwj5おっぐぉっj5g095jg5wjwg0j5うぃjごjうぇj0jgjwgkぽgwっpごwjwjgjうぇgrをっkごpwpgっjうぇgjwjgjrぽrjrじょrpwjg3jg093jg309jgj3jごいおごjwごjgじおhwjgklf,fvkgrくぇおpgw30い93い9-0い359い05986いjgjgmkvlmlks;mkヴぉげいjgっjgj589gじjgじょぐぇjgjゃろいgじょgじょgじh530gっjrじゃrgじょじゃごいおgいじょげjごいrjぎじょっjgj;あjふぉいえじゃおじqじょqjmrlもじゃrごいあgrじょじゃgらjらkrfっjrfjふぁjりjgjgjkrふぁぽjgkrkrがgこkgjがれおgじゃlkgじょいがkgkmvmzっmbんb;mぁじぇぎじ0930943t83う02っjgrjぎおじょgじgsjgじぇそじgじょjgじょpsjgrgjwぎjwgjwjgjwjgrjgそいjぎjwぎjhぽwjgjgjwgjせjlkgljk;sjklsjgsjgrじぇgじぇrげjrgせkrlgjksjっgjklkjgsjkgjsっlgjっgjgkjれおgじgrjをおgじぇじょrjlkrklっglksgjっklせkjgkjlsklgjせlkgせgkljkせjぎじぇいjgじょkgkslkgklsjkjgろいgjsjごいっじぇごじえgjgkっl;gsgjgkrlkgj;jgrwjげgじょおpgwjごpじょ









そうか










理解できないからだ












なぜなら俺は






































「仏だから」


怪物が生まれた。



リチウム 第一話『躁転』 6293文字 作:正宗 2014年7月9日

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