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職業は?
そう聞かれるのが一番困る。素直に『ハッカー』だと言うとほとんどの人間が怪訝な顔をする。ハッカーというと悪いイメージでもあるのだろうか。一部の人間が持つイメージではあるのだろうが、別に犯罪に手を染めている訳ではないし、むしろ、その逆だ。
物心ついた時からPCをいじったり、自作PCやプログラム作成に没頭していた俺にとって、今の境遇は趣味が高じた結果のラッキーだと言わざるを得ない。強いて言うなら、高校卒業間際の二月、俺が開発したゲームプログラムをとある大手企業が無断で使用していたのに腹が立って、その企業が使用していたデータベースを破壊してやったのが人生の転機だったのかもしれない。何がどうなってそうなるのか、なぜかハッキング技術を買われた俺は、高校を卒業してすぐにその企業に雇われて、今では世界中の警察にも手を貸しながら、サイバー犯罪の防止に尽力している身である。
人よりちょっと得意なことがあったこと。そして、運がよかったこと。
昨日で二十回目の誕生日を迎えた俺の人生に、緻密な計算などどこにもない。それはきっと、これからも変わらないだろう。
そんな漠然とした想いに終止符を打ち、運命を変える出来事が起きたのは、二十歳になって間もなくのことだった。