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ステージ6 ピラミッドの頂上にたたずむもの

 キラリたちが近づいてみると、ピラミッドは見上げるほどに巨大でした。


「ふぇ~……。まるで、山みたい~」

「そんなことより、入り口を探すわよ!」


 ホタルの提案で、外周の四辺を巡ってみたのですが。

 どこにも入り口らしきものは見当たりませんでした。


「どうすればいいの……?」

「ん~……。微かだけど、頂上付近から魔法的な気配を感じるわね」

「じゃあ、そこに入り口もあるのかも! 早速GO!」

「ああ、ちょっと! キラリ、待ってよ~!」


 相変わらずの猪突猛進娘キラリを追って、ホタルも魔法のじゅうたんに乗って飛び立ちます。

 目指すはピラミッドの頂上です。


 と、そのときでした。

 背後から巨大な鳥が襲いかかってきたのは。


挿絵(By みてみん)


「きゃっ!」


 いえ、それは鳥に乗った女性でした。

 前回逃げた魔女が、ホタルにつかみかかってきたのです。


「あっ、ホタル!」


 キラリが止める間すらなく、ホタルは女性によって連れ去られてしまいました。

 ホタルを抱えたまま、女性はものすごいスピードでピラミッドの頂上のほうへと姿を消していきます。


「はう……。ホタルが連れていかれちゃった……」


 キラリは親友の身を案じて不安そうです。


「はっ! まさかホタルはあの女とグルで、あたしより先にお宝をゲットしちゃう作戦だとか!?」


 ……いえ、全然そんなことはないみたいですね。


「真実はどうあれ、今は追いかけないと! 私のお宝は渡さないんだから!」


 キラリのお宝ではないと思いますが。

 とにもかくにも、キラリは当初の予定どおり、ピラミッドの頂上を目指します。


 その途中にも多種多様な敵が現れ、行く手を遮ってきました。

 ハニワが襲いかかってきたり、土偶が襲いかかってきたり、ミイラが襲いかかってきたり――。

 ミイラはともかくとして、どうしてピラミッドが舞台だというのに、ハニワやら土偶やらが出てくるのでしょうか?

 といった些細なことは気にしないでおきましょう。


 さらにはヒゲの生えた石像なんかも現れます。

 こういった石像は、世界各地にあるのだとか。

 もっとも、それが飛び上がって攻撃してきたりするのは、この辺りだけかもしれませんが。


「なんか、やけにたくさん出てくるな~。これだけ強固に守られてるってのは、相当なお宝が眠ってる証拠にもなるわよね!」


 キラリは勝手にそう解釈したようです。

 目は輝き、頬は上気し、鼻息は荒くなり、ヨダレも垂らしまくっています。

 どこからどう見ても、主人公とは思えない顔ですね。


「たとえどんな敵が来ても、私は負けないわ!」


 そんなキラリの前に立ち塞がったのは、毎度お馴染み、巨大な物体でした。


「わおっ! これって、あれよね? え~っと……」


 キラリは歴史の授業で習った記憶をたどります。


「ツ……ツタ……」


 どうやらもう少しのようです。


「ツタヤの仮面?」


 惜しい。

 正解はツタンカーメンです。

 正確には、ツタンカーメンの黄金のマスク、と言うべきでしょうか。

 ただ、その巨大さたるや、目を見張るものがあります。


挿絵(By みてみん)


「ツタヤさんって、すっごい巨人だったのね~。あっ、氷山にあった雪だるまって、ツタヤさんが作ったのかも!」


 もちろん、そんなことはありません。

 一応断っておくと、魔法の存在するこの世界ではあっても、巨人なんていません。少なくとも一般的には、そういう認識となっています。

 もしかしたら、どこかにいる可能性もゼロではないかもしれませんが。


 どうでもいいですが、そろそろツタヤと呼ぶのはやめていただきたいものです。

 あのお店では仮面のレンタルなんてやっていないでしょうし。


「って、やっぱり攻撃してくるのね!」


 ツタンカーメンも当然、キラリを排除しようとしてきます。

 これも古代王国の遺物なのは言うまでもないでしょう。


「金で出来た仮面に、炎なんて効かないかな~?」


 キラリにしては珍しく、少しは考えているようです。

 そして出した結論は……。


「でも、仕方がないか。私が使えるのって、炎の魔法と花魔法だけだし」


 意外にも優秀な魔法使い、のはずなのに、その二種類の魔法しか使えなかったなんて。

 残念な事実の発覚です。

 キラリの場合、存在そのものが残念な気もしなくもないですが。


「え~いっ! ゴリ押しの炎の魔法よ! ついでに花魔法もオマケにつけちゃう! 花マル代わりに!」


 どういう仕組みだかはよくわかりませんが、炎と花の相乗効果で大爆発が引き起こされます。

 キラリはこれを狙っていたのでしょう。


「きゃっ! 爆発しちゃった! どうして~!?」


 ……というのは、買いかぶりすぎだったようです。

 経過はどうあれ、キラリの魔法が巨大なツタンカーメンのマスクを粉々に砕いたのは事実。

 キラリは満足そうに笑みをこぼします。


「私ってば、強~い! はぁ……この才能が怖いわ! 美しさに加えて、強さでも妬まれちゃう!」


 まぁ、言わせておいてあげましょう。


 キラリはピラミッドの外壁に添って、どんどんと上昇を続けます。

 ピラミッドの石段は永遠に続くかのように見えましたが、やがては終わりを迎えます。

 夕陽を背に受けながら飛んできたキラリは、とうとう頂上へと到達しました。


 そこには。

 デンッ! と。

 またまたまたしても巨大な物体が待ち構えておりました。


挿絵(By みてみん)


「これは……ス……ス……ス……」


 再度、歴史の授業の記憶を掘り起こすキラリ。


「スピンクス?」


 惜しい。

 回転はしません。

 正解はスフィンクスです。

 どうしてピラミッドの頂上にたたずんでいるのか、どのようにしてここに造られたのか、そんな細かいことは言いっこなしです。


 無論、スフィンクスも攻撃してきます。

 戦うしかありません。


 スフィンクスの口は、砂によって完全に埋まってしまっていたのですが。

 その口の奥でなにやら魔法的な力がくすぶっているのは、いかに鈍いキラリでも感じることができました。

 すなわち、弱点は口の奥です。


「なるほど、この敵の弱点は、のどちんこね!」


 主人公の女の子が、そんな単語を使わないでもらいたいところですが。

 ともかく、キラリはバカのひとつ覚え、炎の魔法で口の中の砂を吹き飛ばす作戦に出ます。


 砂は吹き飛ばしても吹き飛ばしてもすぐに積もってしまいます。

 弱点と思われる部分に打撃を加えるのもひと苦労でした。

 それでも、諦めることなくちまちま続けていれば、そのうち目的は達成されます。


「スピンクス、討ち取ったり~!」


 まだ名前を間違えていることはスルーしておくとして。

 キラリはこうして、スフィンクスとの戦闘に勝利することができました。

 轟音を伴って無残にも崩れ落ちていく、古代王国の貴重な遺物スフィンクス。

 完全に崩れきったあとに、キラリは気づきます。


「あ……ピラミッドの入り口、スフィンクスのすぐ横にあったんだ」


 つまり、スフィンクスを壊したりせずとも、ピラミッドの内部には入れたのです。

 古代王国の遺物は、金銭的な価値こそ低いものの、重要な研究材料として大切にされているのが常だったりします。

 それを無意味に破壊してしまったことになるのですが。


「さ~てと、いよいよピラミッドの内部に突入ね! どんな冒険が待っているのか、ワクワクするわ!」


 キラリは完全無視を決め込むのでした。



     ☆



 ピラミッド内部への入り口まで行ってみると、そのそばに人が立っていました。

 それはキラリにとって、ごくごく見慣れた顔でした。


「あ~~~っ! ヒカルちゃん!」


挿絵(By みてみん)


 そう、そこにいたのは、キラリを置いて先に行ったはずのヒカルでした。


「フフ……しょーがないから、待っててあげたわよ、キラリ!」


 ヒカルは臆面もなく宣言します。


「言っとくけど、1人でピラミッドの中に入っていくのが怖かったわけじゃないからね!?」


挿絵(By みてみん)


「…………」


 いくらキラリでも、それを言葉どおりの意味に取ることはありませんでしたが。

 呆れながらも、ヒカルとの同行を決意します。

 言われるまで思いもしなかったものの、確かにひとりきりでは怖いかも、という気持ちが今さらながらに湧き上がってきていたからです。


 キラリとヒカルは互いに身を寄せ合いながら、幾多の困難が待ち受けるであろうピラミッドの内部へと足を進めるのでした。

 ……魔法使いですから、ホウキを進めると言うべきでしょうかね。


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