ケインとラルゴの生きる道(3)
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ハアハア、と乱れた息がダンジョンに反響して疲れていることを実感する、ケインは相棒のラルゴを見た。やはり息を乱している。ダンジョンに入ってからどれだけの時間がたったであろうか?度重なる戦闘に2人は披露の色を隠せなかった。
「アリーちゃん、水くれ!」
ラルゴが疲れた声を上げる。アリーは今、元の大きさ(タチアナ師匠の等身大)に戻っている。おかげで、戦いがずいぶん楽になった。モンスターの体液を浄化しながら水分を補い大きさを元に戻しているのだ。アリーが竹の水筒に手をかざし、自分の一部である水を切り離し中を満たす。
ラルゴに渡してから、
「ケイン君も補給してください。」
髪の毛がストローのように変化して伸びてくる。最初は何故か恥ずかしかったが慣れてしまった。
「ホントは口移しの方がいいのに♡、ケイン君は恥ずかしがり屋さんね♡」
タチアナ師匠そっくりの顔で、師匠が絶対しない顔で絶対言わないことを言う。
「やめて!それと違うって!」
頭の中に氷の視線を向けるタチアナ師匠の顔が浮かぶ。それだけで震えがくる。
「いーなー、俺だけ仲間はずれ。」
ラルゴが茶化す。
「ともかく、これが最後のフロアだよね。」
「途中、ボスっぽいのはいなかったから…だよなあ。」
向う先の大扉を見ながらラルゴはため息混じりにつぶやいた。
「ボスモンスターは2匹ここにいるんだよな。」
ケインは気持ちを整理した。
「ラル、アリーこの中に入ったら今までよりはるかに苦しい戦いになると思う。だからここで約束して欲しい。」
2人の顔を見まわした。
ラルゴがニヤリとしている、言ってみろと目で催促してきた。
「僕は3人で外に出たい、どんなにみっともない戦い方をしても生き残ろう!全員で!」
ラルゴは何も言わず拳を肩にぶつけてきた、それだけだ。
アリーは今までにない真剣な表情で、
「黒GMは生き残る可能性を残さないイベントをしかけます。いざという時は私がGMの力を使います。」
「その力を使えば、君はどうなる?」
「…前に言ったはずです。姿以外は前の力を使えると、…使っても問題ないですよ。」
(嘘だ、使ってもいいなら此処まで黒GMに付き合わないでなんとかしているはずだ。それにアリーが力を使えば黒GMは難易度を引き上げるだろう。)
チラリとラルゴをみる。
「…まあ、基本俺達で何とかなるだろ、きっと。アリーちゃんはフォローをお願いな。」
「…はい。」
装備を確認し、心の準備をして、3人は扉を開けた…。