紋様術(9)
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休憩中、ケイン達の幾つもの質問にしっかりとサイラスさんは答えてくれた。サイラスさんはとても気さくで話しやすかった。自己主張が強い、そのことを認識してさえいれば結構付き合いやすい人なのかもしれない。ケインは自分のサイラスさんへの苦手意識がなくなっていることに気がついた。第一印象は当てにならないものだ。
(僕、人を見る目はまだまだだよな〜)
そんなことを考えながら3人で話をしていると、急にタチアナ師匠が立ち上がった。思ったより早く瞑想が終わった様子だ。
「ケイン、メンテナンスをするぞ、防具を外せ。」
「えっ、ここでですか?」
「すぐ済む、サイラス!チョット…」
サイラスさんを呼び寄せて耳元でこそこそ話す。
「なっ!…本当か?」
「…あくまでも理論上の話しだ。確証は…」
「ラルゴ!至急帰るぞ!」
「え〜、ケインたちは?」
そう、今日だけでダンジョンを攻略する必要はないので一緒に帰ればいいのだ。
「ケインにはメンテナンス後、一戦してもらいたいのだ。こちらもすぐ帰るから先に行っておれ。」
「では、タチアナ、先にいかせてもらう。」
「結果は知らせてくれ。
「もちろんだ、さあ、ラルゴ!何をグズグズしている。」
「あっ、出口方向にパペットが!」
「邪魔だ!どけ!」
サイラスが左手を振るうと、パペットが粉々に砕けた。
サイラスは居ても立っても居られないい様子でラルゴの手を強引に引っ張っていった、…あっという間に。
「あれ?ナニ?」
「衝撃波の紋様陣を右手に実装しているらしいな。あれは高レベルの紋様陣だ。それより、早く横になれ!」
タチアナ師匠は袋に入っていた道具を全て取り出して並べた。
「…まさかとは思うけど、上書き(リライト)?」
「せっかくサイラスを追い払ったのだ。しかもここなら誰にも見られることはない。」
タチアナ師匠の顔には今まで見たことの無いような、満面の笑みが浮かんでいた。
(師匠、本当に綺麗デス…、でも僕、ピンチな予感がする。)
ケインは自分の悪い予感の的中率の高さを恨めしく感じていた。