紋様術(8)
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「…も、…ダメ。ま、だ、で、す、か?」
ケインはあれから10分近く変なポーズを決めていた。
「仕方が無い、横になれ…止めるな!アビリティは発動させておけ!」
まだ、続くらしい。タチアナ師匠は真剣な目で自分の体を観察している、これでは文句も言えない。
先にチェックが終わったラルゴが近づいてきた。サイラスもである。
「ケイン、いつの間にあんな技教えてもらったんだ?」
「ハーティアさんが時々来てくれて。この技は1月ほぼ毎晩特訓してたよ。ラルはラルで夜ルークさんとどっかいってたじゃん。」
「まあ、俺の方も…ね。」
ニヤリと笑ったラルゴは魅力的で女の子ならどきりとしただろう。きっと何か夜用の変身でも練習していたに違いない。
「…もういいぞ、サイラス、すまぬが結界をはってもらえるか?」
「君のためなら、なんでもするさ。」
そういってサイラスは地面に紋様を描く。タチアナ師匠は敷物を持ってその中に入り、座って目を瞑る、何かをブツブツいっている。
「イメージ固定のために瞑想に入ったようだ、1時間くらいはこのままだ。君達も休んでいるがいい。警戒は怠るなよ!」
2人は背中合わせで座り、警戒しながら一休みする。
「サイラスさん!俺のアビリティ、何かわかりました?」
ラルゴがサイラスに問いかける。
「もう一つの方が何かはまだわからない。アニマルチェンジの印とそれ用の紋様が強すぎて、もう1つがよく印が見えないのだ。しかし、ことからアニマルチェンジを授けてくれた神より下位の存在の印と推測できる。」
「神様に上下があるの?」
「神に上下があるかはわからないが、神に与えられたと思われるアビリティと精霊などに与えられたアビリティとでは力加減に差があると言われている。まだ、実証例がないので推測ではあるが紋様術師の中では通説となっている。君たちは当然知らないと思うがね。」
「タチアナ師匠はあまりそんな事教えてくれないからなあ…」
「タチアナは不確実な事を伝える性格じゃないよ…、研究者としては非常に誠実だからね。それより、ケイン、君は本当に紋様術師泣かせだね。」
「そうなんですか?」
「タチアナは言わないだろう、そんなこと。実際私もこれ程厄介な印は見た事がない。一見ただのブーストの印のようだが、ライントレースが脈動する上に、微妙に変化する。おそらく、これを解析できるのはタチアナくらいだろう。よく、アビリティの安定化が成功したもんだ。」
「…やっぱり。この前僕の紋様描いたのはタチアナさんだったんだ。」
以前、ララカルの街で紋様をリライトしてくれた紋様術士があってくれなくなっていたので、なんとなくそうなんじゃないかとおもっていた。師匠もこの間、口を滑らせていたし。
ケインはタチアナ師匠に瞑想が終わったらその事を聞こうと思った…。