ラルゴの初クエスト(9)
ラルゴはヘイズの肩に留まって、小鳥のふりをしていた。
頭を振り、尾羽を小刻みに動かす。普通の小鳥の真似をして、仕草を練習する。マリアベル嬢と護衛の方達に気づかれなければ合格だ。
マリアベル嬢は気になるらしく、ときどき手を差し伸べてくるが一度とんで逃げて元のヘイズの肩に泊る。
「いいな…」
「なんか、コッチで餌をあげてたら懐かれてさ。」
「そう!餌!何をあげているの?」
「ええと、コオロギとか…」
「無理ですわ。」
ヘイズとマリアベル嬢は親しい雰囲気でいい感じではある…。だが、ヘイズの本命はソフィーナ嬢である。というかヒューズもそうである…ラルゴはこの数日付き合いでそれを知った。
今日はヒューズに気を使ってソフィーナ嬢との仲を取り持つ様に、マリアベル嬢とエリス嬢を誘った。昨日のうちに壮絶な打ち合わせがあったらしい。
しかし、ソフィーナ嬢が女の子1人は嫌だと言うのでエリス嬢が向こうのチームに入った。これはヘイズには嬉しい誤算であろう、隠れて喜んでいた。
「ねえ、ヘイズはソフィーナが好きなんでしょ。ヒューズに遠慮してていいの?」
「ヒューズと俺は親友さ!恋も正々堂々といくよ。今回は順番を決めたんだ、お互い足の引っ張り合いはしない。」
言っていることはカッコいいんだけど、顔は悔しがっている。
そんなとき、獲物が見えた。
「鹿だ…。」
ラルゴ(小鳥)が肩から降りると、静かにヘイズが弓を構え矢を放つ。かきん、と角で弾かれた。
「下がって!モンスターです!」
護衛の2人が前に出るが、素早く近寄って来たモンスターに1人が弾き飛ばされた。
(あれってこのあたりで一番ヤバイっていってた一角鹿だ!)
自分も前に…ラルゴは…何に変身しようか悩んだ。