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ラルゴの尊敬する友人

ラルゴが話します。


新年を祝うお祭りが終わり、村がまた普段の装いを取り戻しつつある、そんなある日、ラルゴは村長の家にいた。

あの後、苦労してなんとか人間の姿に戻ることができた。そしてアビリティのことをケインと相談し、まず家族に打ち明け、それからアビリティについて教えを乞うためサラさんのところに話をしにいった。なぜなら、サラさんは村唯一のアビリティ持ちであるから。

そうしたら、サラさんからこのことは村全体に関わることだからと村長に報告した方がよい、と言われ村長宅で関係者を集めて話し合うこととなった。

ケインの家からは母親と兄が、ラルゴの家からは両親が、それに村長とサラさんが同席している。

村長(昔から名前で呼ばれているところを聞いたことがないので名前を知らない)はラルゴの知らない話をたくさんしてくれた。

この村にもう少ししたら王国官僚(今でいう国家公務員のこと)が来て年に1度の視察を行うこと。作物の出来柄や村の税金の使い道とか、いろいろと調べられること。その時、村にはアビリティのことを報告する義務があること(というかそのために新年の祭りの後にくるようになっているらしい)。

「つまり、王国に2人のことを報告なければいけないのです。そして2人は王都に赴いてアビリティについて詳しく調べられると思います。」

長い話のため村長が大きく息を乱して話が中断したのを見計らって、サラさんが一番大事なことを伝えてくれた。

「ここは王直轄の村なので、2人とも将来的には王国に仕えるように言われると思います。と言っても、いきなりではなくまず冒険者を勧められるようです。その功績や行動、アビリティの内容によって王国のスカウトの選択肢が決まるようです。また、アビリティ持ちは冒険者になっても外国には出国出来ません。ちなみに私は冒険者にも王国へ仕えることもしませんでした…私は戦うことが怖かったから。そのため、村へ帰ることを認めてもらえましたが、この村から外へ出ることは禁じられました。このことは村の人は誰も知りません…。」

サラさんは、どこか怯えたように話してくれました。どうも、王国はアビリティ持ちに敏感のようだ。

それはそうだろうとラルゴは思う。例えば、自分のアビリティは”チェンジアニマル(動物変身)”らしいが、それを上手く使えばかなりすごいことが出来ると思う。

ケインの母親と兄は、かなり真剣に聞き入っているし質問も返している。元々ケインは家を継ぐことが無い立場なので、大きな街にでも出て身を立てることを視野に入れていたみたいだった。ケインの家族はケインが王国に雇われるなら文句は言わない、というより喜ぶであろう。ただ、ケインはこの村に愛着を持っている。彼の父親はモンスターの襲撃から村と家族を守るために命を落としている。直接本人から聞いたわけではないが、ケインが強さを求める理由の一つだろう。どうするつもりかな?

ケインは家族よりずいぶんとのんきな顔をしている。もう、これからどうするかを心に決めているのだろう。普段は好きなクッキーとプリンをどちらから食べようか悩むようなヘタレだが、時々信じられないほど決断力を見せる。

ふとケインと目が合った。不埒な事を考えていたのをばれないで欲しいと思う。あいつはそこらへん異様に鋭いからなと心で考えていると、

「ラルのとおちゃん、ラルはどうするつもり?…ラルが冒険者になるなら僕が守るよ。」

いきなり我が家の今一番の問題に触れてくれやがった。ラルゴは長男で跡取り、しかもラルゴの家はこの村最大の農場と農作作業者を抱えており実質的な支配者ともいえる存在であった。ちなみに村長は行商をしていたこともあり村の外の事情もよく知っており顔もきくため村長をしている、いわゆる顔役である。

ラルゴの父親は少しの間、難しい顔で黙っていたが、

「王国に属する身分である以上、ラルゴのことで何かを言われたら王国の指示に逆らう事はできない。…だが、…出来れば冒険者になって認められる功績を立てた後は、王国に顔が利く身分で村に帰って来て欲しい…。」

ラルゴの家にとっては確かに理想的だ。

(現実派の我が親父殿にしては希望的要素が随分強いし、不明確な要素が多すぎる、イマイチだな。)

ラルゴとしてもそうありたいが、あまり時間がかかるようでは弟に悪い。

「ラルゴの弟もシッカリしてるからさ、どちらが後をついでもいいようにシッカリ決め事をしとくのがいいんじゃない?こいつはラルのためを思って言ってるんじゃない、正直、この村に憂を残して出て行きたく無いんです。人の家の話に口出しして悪いけどさ、…もう戻ってくる事ないと思うから。」

ケインは、我が家の、つまり村の大問題を…分かっていてもラルゴの父親が言えなかったことをアッサリと言い切った。

(相変わらず決断力がすっ飛んでいるよケイン、俺はもし親父殿のようにリーダーを任される立場に着いたなら間違いなくお前を手本にするよ。)

ラルゴもこれから自分がどうするかを、全力で決断したいと思った。

(ただ、あの押しの強さを何故、ガールフレンドを作る事に使えないのかね…。)

ラルゴはケインをかなり買いかぶっています(笑)

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