表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/73

両手に花で初クエスト(7)

いつも感謝・感謝です。


「…ラル、僕もうダメだ!」

ケインは諦めたような声を出した。

「諦めるな…諦めたとき全てが終わる。って寝るな!」

ケインはカウンターで突っ伏して居た。今、2人はそれぞれの初クエストの報告書を書いている。ラルゴの方も進んでいないみたいだ。

ギルドクエストは報告書を提出しなければならない決まりである。なんとか気を取り直して続ける。

「夜にスキンヘッド猪を2匹退治っと。その翌日森でオーガが1匹現れたが退治っと。」

”遅咲きのすずらん亭”の共有フロアはサララさんやタチアナ師匠、ルーク達で賑やかだ。ときどきサララさんが進行状況をチェックにくる。

「どこまで進んだかしら?」

また来て、サララさんが聞いて来た。

「もう全部で来てるぜ!だから俺もあっちに行くぜ!」

ラルゴがさりげなく裏返しにして提出して逃げようとしたが捕まりチェックが入る。

「再提出!コレじゃ依頼人が退治したことになるじゃない♪」

「え〜、でも〜そういう依頼だし…」

サララさんはハウスの仲間がいかにも活躍した風に書かないととか、アピールが足りないとか、沢山の注意してみんなのところに戻っていった。

「ふえ〜。なあケイン!そっちはよかったよな両手に花で。コッチは男ばっかだし。」

多分言われると思った事を言われて苦笑する。

「まあな、サララさんは頼りになるし、師匠は格好はともかく知識が豊富だし。」

「俺はタチアナさん、アルパカの制服似合ってると思うぜ!」

「そりゃあれだけの美人だし、何を着ても似合うよ。」

「でも、残念だよな〜。帰っちゃうなんて。」

そう、タチアナ師匠は今回の件で王都に一時帰還することになった。アニマルチェンジのアビリティの持ち主が”禁忌”に触れモンスターの姿になった者は2度もとの姿に戻れないというのが今までの定説だった様で、それを師匠は覆したかたちになる。暫くは紋様術師達はそのことで騒がしくなるだろうと師匠は言っていた。そしてもう1度足場を固め治して、王都で研究生活に復帰できる様にすると…。帰り道、そう言って遥か遠く王都を見つめていた師匠の目はキラキラしていた。ケインも師匠は冒険者より紋様術研究の方が似合うと思う。

(本当に紋様、好きなんだろうな。あんな風に何かに打ち込める人はどれだけいるのかな。)

少し考えることに夢中になって手が止まっていることに気付き再開しようとして、ふと気になったことをラルゴに聞いてみた。

「ラル、今いいか?、僕たちのアビリティのことなんだけどな…」

「2つかもってこと、っだろ?」

「ああ。今回の件でアビリティのこと、タチアナ師匠みたいな専門家に相談した方がいいと思ったんだ。」

「ていうか、タチアナさん知ってたぜ。」

「えっ!」

「俺、王都を出る前に一度タチアナさんにあったじゃん?その時にね。」

「なんで黙ってたんだよ。」

ラルゴは少しばつが悪そうに、

「…そうしろって。なんか、理由は教えてくれなかった。」

ケインはタチアナの方を見た。視線が合ったせいかこちらに来る。

「私へのことでも話題にしていたのか?」

お酒を飲んでいたのだろうか?頬が赤い。

「僕、アビリティが2つあるかもしれないんです。師匠は知っていたんですか。」

師匠は一瞬ラルゴに視線を送ってから、

「話したのか…。”禁忌”が気になって相談する気にでもなったか?」

「はい、でもなぜそれを僕にいわなかったんですか?」

「いうことを禁じられていたのだ。そのことについては詳しくは話せんが…。だが、ちょうどいい。話せることを話しておこう。」

師匠もカウンター席に座った。

「お前達のアビリティは紋様術師達の研究心を刺激しているのだ。これから、フーバー老師の門下でラルゴが、リシェル老師の門下でケインが研究される。ちなみに私をリシェル老師が拾ってくれたのはそれも関係する、一番よく知っている立場だったからな。」

2人の反応を確認するかのように間を置いてから、

「そんなに心配するな。とって食われるわけではないぞ。”禁忌”があるかどうかも調査してくれるだろう。お前達は今までどおりしていれば良いのだ。」

「僕たちのアビリティかどんなものなのか、師匠は知っているんですか?」

「わからん…紋様術師としては悔しいの一言だ。」

それでも、ケインは心が軽くなるのを感じた。研究対象にされることはいい気がしない、だが自分達だけの秘密にするのはすでに辛くなっていたから。

「もう今日は気にするな…それよりここが間違っている!」

師匠はケインの報告書をみていった。

「…現在最高の天才美女と書かなければ…表現力が稚拙だな。」

(これは、場を和ませる為の師匠の気配りだよな…たぶん。)

「なんにしても、ラル、早く終わらせようぜ。向こうの、初クエスト祝勝会が終わってしまう。」

冒険者にとっての初クエストとは特別な意味を持っている、成功した初の印クエストのことをいいパーティーハウス総出でお祝いをするのである(※)。

「…主役を外して盛り上がってるんだからこのハウス、おかしくない?」

「ここ楽しいと思うよ。」

ケインはアビリティを持ったことで、随分賑やかな人生になってきたなと思った。

自分にとってそれは良いことなのだと…。


夜中に目が覚めてしまい、アクセスを確認したらアクセス数が多くて、嬉しくなって書いてしまいました…眠…zzz。


(※)最初のキラキラ蟹のクエストはサララによって失敗と判断された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ