両手に花で初クエスト(5)
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タチアナ師匠の説明は続く。
「アビリティとは、神や精霊などの祝福、送られたプレゼントだ、自分の力ではない。あくまで大いなる存在から力をもらっているに過ぎぬ。
アビリティはときどき使えなくなるものがいる。それはその神の怒りに”禁忌”に触れたからだと言われている。
アニマルチェンジの場合、モンスターに姿を
変えたときがそれだ。いくつか報告例がある。モンスターは魔神が作り出した眷属だからという説がある。王都に行けばいずれかの紋様術師に説明されていたはずだ。」
つまり、隠していたために知らなくてはならない危険を知らず、使い方を誤ったということか。
「”禁忌”に触れた為に、神の怒りに触れた為にアビリティを取り上げられたのだ。そのままの姿でいるしかあるまい。」
オーガの木こりさんが泣きながら声を上げる。
「なんとかならないのですか?」
「姿の戻し方など知るわけがなかろう。」
「…でも、師匠ならなんとかなるでしょ?」
うっ、とタチアナ師匠は少し呻いた。
「まあ、うむ、調べて見ないことには。」
「流石ですね、絶背の美女で、天才紋様術師なんて師匠しかいません!」
「あっ、当たり前のことを言うな。おまえ、絶対動くなよ!」
タチアナさんはオーガの身体を観察し始めた。ときどき手をかざしてブツブツと呪文を唱えている…。
「…欠損している、…いや、うむ…、これは…、従来の説を覆せるかもしれん…。」
そして、オーガの木こりさんの顔をみながらタチアナさんはまるで断罪の審判官のように冷たく言い放った。
「もしかしたら元の姿に戻れるかもしれぬ、だがかなりの痛みを伴うぞ。しかも失敗して死ぬ確率の方が大きい。…どうするか選ぶがいい。我が紋様術、受けてみるか?」
しばしの間をおいて、オーガの木こりさんは頷いた。
タチアナさんは筆を取り出してオーガの身体に紋様を描く。
「アビリティを活性化してその力を使い切らせる。それまで身体が持つか運次第だ。」
アビリティに反応してか紋様が浮かび上がる。オーガの木こりさんが泣きながら、悲鳴をあげ、転がり回る。
「私は、外を見てるね。」
そういってサララさんは洞窟を出ていった。
ケインはタチアナ師匠と共に成り行きを見守る。
30分ぐらいした頃だろうか。痛みに失神して、ピクピクと痙攣していたオーガの身体が歪み始めた。ゆっくりと人間の姿を取る。
タチアナ師匠が息を確かめた、なんとか大丈夫のようだ。
「バカ弟子よ、アビリティは諸刃の剣だ…。覚えておけ。」
言い方は冷たいが、師匠の声になぜか優しさを感じるケインであった。