両手に花で初クエスト(2)
感謝・感謝です。
今回は戦闘があります。
表現は控えましたが好きでない人は飛ばしてください。
初シリアスです。
ケイン達3人は、依頼のあった村に無事到着した。そして、依頼内容の確認作業に入る。
「…では、状況はかなり変わってきてますね。」
サララさんが村の代表の若者と打ち合わせをしていたので、ケインは同席した。何事も経験である。
「はい、ですので依頼の内容を変更させてください。お願いします。」
若者は素直に頭を下げている。
「ここまで内容が変わると受ける事は…、ではまず、現状の確認をさせていただきます。受けるかどうかはその後にさせていただきます。」
キッパリとした言い方なので相手に意思がはっきり伝わる、サララさんは流石だなとケインは思った。
出来もしない仕事をうけられると期待させてはいけないのだ。
内容は、始めスキンヘッド猪の討伐だった。つがいが作物を荒らしてしまうらしい。大きすぎて手が出せないとの事で、冒険者にいらいすることにした。だが、その依頼を出している最中に、大鬼があらわれたのだ。初心者の冒険者では荷が重い。サララさんの実力なら視力に不安はあるが大丈夫であるだろう。だが予定外の事態には慎重になるべきだと伝えてきてた。ケインもそう思う。スキンヘッド猪でも決して容易な相手ではないのだから。オーガは何人もの村人が見かけ、1人は捕まって食べられそうになったらしい。その上、1人木こりの若者が行方不明になっているという。
その話の後、ケインは畑に向かった。
確かに、ひどく荒らされている。ケインは農村出身なのでコレがスキンヘッド猪の荒らした仕業だとすぐわかる。…しかし、大きな足跡も見つけた。
(…オーガが畑に?人を襲う為?)
よく見ると、キュウリやトマトが引きちぎられている。高さ的に猪ではない。さらによく調べて見ると、大根と人参が引き抜かれて持ち去られている…これもスキンヘッド猪ではありえない。
「ここに来た、オーガはベジタリアンなのかな?」
調べた事をサララさんとタチアナ師匠に伝えてから、自分の意見を言う。
「そんなわけがあるわけなかろう、第一1人食されているではないか。」
「そっちの可能性が高いけど、…生きている可能性もあるわ。私は受けようと思うけどケイン君の意見を聞かせて。」
決定権はリーダーのサララさんにあるが、今回のクエストはケインの修行用である。
(…これは、試されている?)
「受けるべきだと思います。今回の依頼の優先順位は人命救助、本来の依頼のスキンヘッド猪の討伐、オーガ退治の順にするべきです。」
サララさんは上出来と言って頭を撫でてくれた。年下扱いは遠慮願いたい、師匠も真似すんな!
結局依頼を受けて、夜待っていると、スキンヘッド猪が2匹現れた。言われていたとおり大きい。
「ケイン君、後方に回り込んで1匹お願いね。後、わたしだと逃げられてしまう恐れがあるから、そのときは無理しない程度に追いかけてね、本当に無理しないでね。」
了解の意思を伝えてから飛び出す。月明かりで比較的戦いやすい。サララさんは目が悪いので、近くに師匠が松明を持って待機している(まだ火を付けていないが)。
ケインの動きに1匹が頭を向けた。畑は足場が悪いので林の近くで構える。武器の短剣はまだ抜いていない。突進してくるスキンヘッド猪を静かに見つめた。
(命がけ、生きるために僕を殺そうとして向かって来ているのがわかる、必殺の意思が瞳にこもっているね…。僕も、サララさんも、村人の命のために、必殺の決意です…あなたの命をいただきます。)
アビリティを発動していたせいか、異様に時間が長く感じられた。スローモーションの世界でスキンヘッド猪の、額から突き出たスキンヘッド部に両手を当て横に押す。スキンヘッド猪は全体重をかけた突撃の勢いが首にかかり骨が折れた手応えがあった。自分が今、1つの命の灯火を消した事を全身で感じた。
その後、サララさんお方も無事倒した。
「猪の解体は村人に任せましょう、あと見張りもお願いして、私達は明日に備えましょう。明日は早朝から行方不明者の探索に行きます。」
「了解した。」
「はい。」
自分の声が思ったよりもかすれていて自分でびっくりした。
その夜、当てがわれた村長の部屋に3人で寝た。1人で寝ると言ったのだが、2人が強引に一緒に寝ると行って布団を持って来た。
(両手に花でラルゴにうらやましがれるな。)
そう思いながらケインは布団を頭からかぶって、…震えが止まらない自分の身体を只々抱きしめていた。




