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小さな依頼

ヒロイン登場です。

天気が良いその日、ケインはサララさんから依頼された洗濯物を干しを終えてからハウスの共有フロアに向かいカウンターに座った。サララさんはもういない。用事を済ませるために出かけたのだ、遅くなるらしい。

今、ルークのチームはラルゴを連れて依頼をこなしに旅立っていない。ケインはサララさんと二人きりで留守番である。

カウンターには課題が置いてあり、サララさんが戻って来る前に終えなければならなかった。

「…ええと、戦っている最中、依頼人が別のモンスターに襲われました。あなたならどうします…、か。」読みあげながら、頭をひねる。

コンコン、と扉を叩く音が響いたので玄関に行き扉を開ける。

そこには、ケインより1、2歳年下と思われる女の子が立っていた。

「あなたは、冒険者ですか?」

「はい、新米ですが。」

「よかった、あなたに相談…依頼があるのですがお願いします。」

ぺこりと頭を下げてくる。

「…今、担当の者が出払っておりましてその後ではいけませんか?」

正直ケインは焦った、以来の受け方も知らないのだから。

「あなたに、です。話だけでも聞いてください。」

その勢いに押されて、なかに通してしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


結局、話を聞いてケインは依頼を受けた。今、2人で移動している。パーティーハウスにはサララさんに当てた手紙をおいて来た。

内容は、紛失物の探索依頼だった。大事な預かり物のネックレスを紛失してしまったそうで、今向かっている草原で落としたのはほぼ間違いないのだと言う。ただ、そのもの自体の価値は低く、彼女(マリアと名乗った)もお金はそんなに持っていなかったらしく他では断られたらしい。

「今日中でないといけないので、ゴメンなさい…。」

「僕に謝る必要はないよ…。」

ケインも最初断ろうとしたが、”謝れば許してくれる人です。でも、見つけられる可能性が少しでもあるなら、私はそれをお全力でしたいのです。”と言ったときの瞳に強い意思を感じた。心が動かされた、この人を今日は見ていたい思った。その為にサララさんに怒られてもいいと…ちょっと思った。

指定した場所に着くのは多少時間がかかった。本来馬車でいくべき距離なのであるが、時間もお金も無いので、身体強化してお姫様抱っこして走った。最初怖がっていたが、スピード感が気に入ったのか途中から喜んでいた。

「じゃあ、落としたときの行動を教えて。まず、その範囲を探してみよう。」

「はい、…ええと。」

2人で歩き捜して回る。昼頃になっても見つからな方のでお弁当を食べた。サララさんが作ってくれていたサンドイッチを持って来たのだが、2人で半分こした。マリアは随分喜んで味わいながら食べていた、きっとお腹が減っていたからだろう。小鳥の鳴き声がよく響き渡る、一心不乱に探したからか、心が気持ちよかった。このところ、ケインは気分が良くなかった。ラルゴと離れたこともそうだが、この先自分がどうしたいのか、イマイチわからなくなっていたのだ。探し物一つに全力を尽くすこの娘の姿が羨ましいと思っている。

「ありがとう、すっごく美味しかったわ!」

笑顔でマリアはお礼を言って来た。作ったのはハウスの人だからと返事を返して、また探し物に戻った。

その後、範囲を広げて探すものの見つからなかった。

「…時間だわ、…終わりにしましょう。」

マリアが時計を見ながら終わることを伝えて来た。

「もうすこし、いいけど?」

帰る時間が遅くなるからあまり進められないが、一応聞いて見た。

「いえ、この時間までと、決めていたから。気を使ってくれてありがとう。」

それから草原を抜けて道に出たあたりで、さりげなくマリアを見た。唇を噛んでいるが瞳は後悔していないと語っているようだった。

「私なんかの、こんな小さな依頼の為に一日付き合ってくれて、本当にありがとう。本当に本当に感謝しているわ。」まっすぐ自分の目を見つめながら語る彼女に胸がドキッとした。知らず、一歩下がる。

(⁈)

靴の裏に違和感を感じ、足をどけてみると何かあった。

「それ!」

マリアが急いで拾い上げる。

「すごい、見つかった!」

ありがとう!と何度も繰り返す彼女に、照れながら運がよかったねというのが精一杯だった。

帰りもまたお姫様抱っこだったが、疲れていたのかすぐマリアは寝てしまった。おかげでドキドキしているのに気づかれないで良かったとケインは思いながら時々彼女のかをお見つめた。

昨日までのつまらない気分が吹き飛んでいた。ケインの心は炭火のようなじんわりとした暖かさに包まれている。今日は、とても疲れたが大きな収穫を得た。

「ありがとう、マリア。」

心から彼女に、…落し物をしたことに感謝した。

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