ララカルの街にて…冒険者業に就職(3)
朝の修行の後、支度をしてパーティーハウスに向かう。今日のパーティーハウスは本命になるだろうと説明してくれた。なんでも対応が丁寧で良心的なパーティーハウスとし有名ならしい。
「それにしても、ケイン君のアビリティは不安定ですね。タチアナさんはそんなに腕の悪い紋様術師ではないと聞いているのですがねえ。」
ケインが聞いたところによるとタチアナは若手有望株の1人らしい。他のアビリティ持ちがタチアナのところにメンテナンスをしに来たときに聞いたのだ。紋様は描いておしまいというものではなく、月に1度の頻度でメンテナンスが必要なのである。描いた者が担当する必要は必ずしもないが、メンテナンスは描いた者、またはその門下生が担当するのが普通だ。
ハーティアさんの呟きに、爆笑という反応をしたものがいた。ラルゴだ。
「それには理由があるんですよ、タチアナさんがこいつに紋様を描いている最中に緊急のメンテナンスが入ったんです。相手が貴族ですぐに来いって言われて。
しょうがなくタチアナさんはそこからハイスピードで描いたもんで、アビリティは不安定、アビリティの解析も上手くいかなくなったってて。
だから、タチアナさんはケインをみると自分の駄作をいつも見せられてる気分になるから嫌なんだって。」
あの冷たい視線は僕ではなく紋様に向かってたわけだ…僕が嫌われていたわけではない?ようだ。
「紋様のリライト(上書き)は1ヶ月は間を置かないといけないはずだから…、そろそろリライトが出来るんだろう?ならパーティーハウスが決まってからですね。
パーティーハウスごとに懇意にしている紋様術師は違うからね。」
ハーティアは哀しい者をみるような、生暖かい視線を送ってきた、やめて欲しい。
「そろそろ着くよ、その角を曲がってすぐだ。
行ってらっしゃい、骨は拾ってあげるから。」
最後に変なことを言ってきたがハーティアさんのセンスはこのところ同行してもらって理解している。
「頑張ります。」
「骨を拾われてやるぜ、待っててくれ!」
調子を合わせたラルゴの返事に力が抜けていくのを感じた…それはそれで良いことなのだろうと思うことにした。