ララカルの街にて…冒険者業に就職(2)
カンカンキンキンと音が響く。
早朝、2人はハーティアさんに剣術の指導を受けていた。
二人掛かりで切りかかって行っても全然平気で、逆に切り返される(ハーティアさんはわざわざ歯を潰した練習用の剣を用意してくれていた)。
(Aランクの冒険者って、すごすぎ。)
「剣はこのくらいにしましょう。次はアビリティを使って全開で来なさい。」
ハーティアさんは剣を置いて木でできた短剣を持って構えた。ケインも短剣にする、こちらは本物だ。
「ラルいくよ、アビリティ発動。」
ハーティアさんの正面に高速で移動し左右に動いて攻撃のタイミングを探りながら隙を作ろうとする。
と、後ろからラルゴ(犬)が噛み付こうとするがハーティアさんは振り向きもせずによけて拳骨を下ろす。
「(ゴツン)はい、脱落。バレバレだよ…。」
(自分が気を引いて、ラルが奇襲。悪くないと思ったけど…。相手が悪すぎ。)
ケインはさらに早く動くことをイメージして側面から攻撃を仕掛ける。
ハーティアさんの左拳がケインの顔に伸びてくる。かわして懐にはいった。
「おごうっ!」
何が起きたかわからなかった。何時の間にか地面に這いつくばっている。ハーティアをみると攻撃したままの姿勢で止まっていてくれた。膝蹴りを顎に受けたようだ。
「あんな誘導に、引っかかっちゃダメだよ。」
手をヒラヒラさせながらレクチャーする。
「これがSCM(※)。大いなる過去との連環記憶、王国がアビリティ持ちを冒険者になることを勧める理由だ。」
2人はに罰としてスクワットを指示しながら話を続ける。
「過去の遺跡、ダンジョン、過去の魔法文明が作ったモンスター達。それらに長年、接することにより科学でも魔道でも説明のつかない身体能力の成長や知識が身につく。
たとえアビリティ持ちとて、これを得た者に相対すれば勝つことは容易ではない。」
ラルゴと目を合わせてみると、同じことを考えているとアイコンタクトで返して来た。冒険者として十分な実力をつけるのは、はるか彼方、先の先、長いな~と実感した。
「ちなみに昨日のパーティーハウスからは採用を見送るって連絡が来たからね。」
とどめを刺されました。
※SCM:スーパー・チェーン・メモリー
ゲームでいうところの経験値を表現する苦しい言い訳。本来SCMはサプライチェーンマネジメント(材料の生産から需要・購入に至るまでを一つのチェーンにみたてた経営・管理の一手法)の略語