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タチアナ史上最大の屈辱

ケイン達の騒動があった日から数日後、術師会館の比較的簡素な部屋にタチアナはいた。

今回の顛末の報告、というより査問会である…。よくっもまあ長老達がこれだけ集まったものだとタチアナは驚いた。

(いくら私が王国一の美貌の持ち主だといっても、…みんな暇なのね。)

やがて、最長老が声をかけて来た。

「さて、タチアナくん。こっちへ来てくれるかな。」

長老達の席の近く、対面する位置に椅子がある。

タチアナは礼もせず、そこに座る。その態度に長老達から不満の声が上がる。

(いびりたければいくらでもしなさいよ。)

タチアナはここにいる誰にも頭を下げたく無かった。

「ただの報告会だ、堅苦しくする必要はないよ。」

ほとんど会ったことが無いのでよく知らなかったが、最長老はどうやら話のわかる人物のようだ。

「じゃあ、始めよう…今回の件の報告書はもらっている。新種のアビリティの調査のため、高い金を払ってダンジョンを用意した、

Aランクの冒険者も雇った。

だが、結果として調査は失敗した、

ダンジョンは今侵入不可能だと。

…これで間違いないね。」

「…はい。」

拍子抜けするほどは話しが早い…。これならすぐ終わるかもとタチアナは少し期待した。

失敗というより言葉に反応してか、また長老達から不満の声が上がったりしてザワザワし始めたが、最長老は手を上げてそれを制した。

そして、ここからタチアナにとっては予期しない展開になった。

「タチアナ君に落ち度はないから特に懲罰はなしだよ。…ただ、調査からは外れてもらうね、師匠役も終わりだ。」

「了承しました…。」

「じゃあ、その件は終わりにしよう。」

あまりにも甘い裁定と早い査問の終わりに返って戸惑ってしまった。

「じゃあ、タチアナ君はこちらに座り直して。」

長老達の席のはじっこ、つまり末席を指してそこに座るようにタチアナに指示がでた。

(…目的は何?これから何が始まるのかしら?)

「じゃあ、ハーティア君を入って。」

扉から入ってくるハーティアに、今回雇っていた姿隠しのアビリティを持つ男に視線を送る。

「わざわざ来てもらって済まないね。」

「お気になさらず、上司が最長老によろしくといっておりました。」

ハーティアが挨拶を返す。

「皆に説明しておこう。彼は私の知り合いの配下で冒険者だ。タチアナ君の要望に彼を押したのは、その私の知り合いが信用が置ける人物だと推薦してくれたからだ。」

周りの反応を確認するように少し間を置いて

「…今回は彼の上司が私に気を利かせてくれてね、面白い話を持って来てくれた。ハーティア君、君の口から報告してもらえるかな。」

「はい、…今回の依頼はアビリティ持ちのケインとラルゴの2人を監視して、新しいアビリティの情報を得ることでした。結果的にそちらはなにも得られませんでした。

しかし、2人は面白いことを話していました。」

タチアナは自分の方をみようともしないハーティアの話っぷりに、自分に不利になる話が始まるのだろうと予想し…的中した。

「2人ともマルチアビリティ持ちの可能性があります。」

ハーティアが2人の会話を再現するように話しながら報告すると、部屋の中はどよめきに包まれた。

2つ以上のアビリティを持つ者をマルチアビリティ持ちという。非常に珍しいケースな上に、1度に2人ともなると前例がない。

このとき、最長老の視線にタチアナは気がついた、そして意図するところも。

「非常に興味深いことで、これから追跡調査が必要になる。

だが、残念なことにタチアナ君が今、それを外れたために後任を決めなければならない…さてどうしたものか。」

(…私から2人を取り上げて、…これほどのサンプルを奪って、それを誰が研究するのか決める席に私を座らせて!

これが本当の罰なのね、なんていやらしい。)

心の中で、タチアナ史上過去最大級の憎悪が渦巻いたが表情には出さない。そんなことをすれば最長老を喜ばすだけだ。

その後、タチアナは一言も発言することもなく、ただ椅子に座ってこの拷問が終わるのを待った。

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