第五節 -13- シフト
《リスト。こいつを倒せないと第三とは戦わせない、というのは撤回する。今のこいつは、第三に至らないまでも、第四よりは強い。お前とグローリーと組んでも、無理かもしれない》
《そんなっ……。でも、あれは、第三に至らないのでしょう。なら、私たちは》
《違う。相性ってやつだ。俺はお前らを鍛えた。第三に匹敵するくらいにまでは、鍛えた。だがそれは、第三だけを相手に考えた場合だ。対第三の戦略、魔法は教えたし、第三以外でも、ほとんどの魔族をお前らだけで倒せる程度の戦力にはした》
《なら》
《それでも。お前らは第三に匹敵する戦力を有する、しかし全く戦法が違う魔族と戦ったのならば、瞬殺される。第三と第四以下の戦力の隔たりは大きい。だから、今の第六は、その中間……少し第三寄りの域の戦力を有していると考えていい》
《だから、私には、勝てない》
《そうだ。俺が知っている第六……先ほどまでの第六ならば、お前らでも倒せたし、実際、倒せる直前にまで至った。こいつは違う。今のこいつは、俺が戦うべき相手だ》
《それは、今の第六の姿が……》
《そうだ》
勇者はゾォルを、少女の姿をしたそれを、ある魔族の姿をしたそれを見て、言った。
《魔王の姿をしているってことは、魔王の情報が少しでも得られるかもしれない。簡単なシミュレーションと、情報収集だ。あれを、お前にやるわけにはいかない。お前らは、見ておけ。これが、人類の頂点と、魔族の頂点の偽物の戦いだ》
勇者は通信を切った。
彼は魔王の姿をしたゾォルを、再度、しっかりと見据え、思う。
さて、どうするか……。