第二節 -15- 昂揚興奮歓喜
青年は歩きながら、興奮した頭を巡らせていた。
――これは予想以上だ! まさか、あれほどまでに魔法の才があるとは思わなかった! それも、人間的ではなく、魔族的、つまり、論理的ではなく感覚的な魔法の才。俺もけっこうな才能があると思ってはいるが、天才と呼べるほどではない。だが、あいつは天才だ! 俺ですら見たことがない天才。おそらく、この世界で一番の天才だ! 総合的な能力が俺を超えることはないだろうが、魔法だけならば、いずれこの俺を超えるだろう。魔力変換率、つまり魔力親和性が異常なほどに高いことはわかっていたが、あれほどだとは思わなかった! 俺も「きっかけ」は与えてやったが、それでも、それだけで魔王と戦うことをあれほどまでに現実的に体験するとは思わなかった。俺の魔王との戦闘シミュレーションのほんの一部を意識の中に放り込んだだけなのに、それだけで、あいつは俺のシミュレーションを超える出来の、さらに現実的なシミュレーションにまで発展させた。これはつまり、魔法の使い方が上手いということ、魔力変換率が高いということだ。それも、俺をはるかに超えるほどにまで。
青年は余りの興奮に顔がにやけてしまっていた。爽やかとはとても言えないような笑顔。しかし、嬉々とした感情だけは嫌でも伝わってくるような笑顔。
「我が選択に、間違いはなし!」
青年は思わず叫んだ。