第二節 -5- 傲慢な青年
青年はその脚から魔力を放出し、物凄いスピードで移動していた。
青年の眼前には魔法によって描かれた地図のようなものが浮かび上がっている。
青年の目的地は、人間の集落。それ以外には特に決めておらず、とりあえず人間がいる場所であれば何処でも良かった。
何故青年がそんなことをしているのか、それは青年の目的成就の為であった。
青年の目的とは、全ての魔族を駆逐すること。
だが、そんなことを青年一人でできるはずもなく、故に、青年は自分と共に魔族を駆逐する仲間を探していたのだ。
国があれば、その軍に力を貸し、王に恩を売り、魔法の才がある者を探すと言った風に、青年は仲間を探しながら、その国自体を強化していた。
魔法を研究している場所があれば、それに力を貸し、研究結果を貰ったりした。
青年はそのようにして、世界を巡っていた。
ただ、魔族を滅ぼすために。
「お」青年の視界に、街らしきものが映った。青年は方向転換し、その街らしきものまで行く。門に着き、青年はその脚から魔力の放出をやめた。
門には二人の衛兵が呆けた様子で立っていたが、青年の姿を見るとその手に持つ槍を青年へと向けた。
「何者だッ!」
「世界を巡ってるんだよ。わかったら、それを収めろ」
青年は衛兵を睨んだ。いきなり槍を向けられて良い気をする者はいないだろう。
衛兵はびくっと身体を震えさせた。だが、槍は収めない。
「収めない、か。まあ、収めたら収めたで駄目だが。それにしても、毎度毎度面倒臭いことだ。魔族の襲撃はここ数年ないってのに人間がその戦力を維持しているのはありがたくもある。だが、魔族と言う敵がいるにも関わらず、未だに人間同士で戦争してるってのは、やっぱり愚かとしか言えないよな」
青年は呆れたように溜息を吐き、その手を衛兵たちに向けた。
衛兵たちはその手を見て驚き、ぺこぺこと頭を下げた。