14/112
第一節 -13- 魔王の決意、少年の始まり。
魔王が言った。
「エレクトロが死んだ」
それは集まった魔族たちに大きな衝撃を与えた。
「これがどう言うことか、解るな?」
魔族たちは微動だにしなかった。
解らなかったからではない。応える必要すらなかったからだ。
「そうだ。――故に、これより方針を変える。シャム」
「此処に」
魔王が言うと、シャムがその横に現れた。
「では、これより始めようか。人間どもを駆逐するための、本格的な会議を、な」
――この日から、魔族たちの動きは大きく変わった。
まず、人間の街への侵略行為がなくなった。
これにより、人間たちは大いに喜んだ。
次に、人間が魔族に襲われる事例がなくなった。
無論、これについても人間は大いに喜んだ。
しかし、それはこれより始まることの準備にすぎなかった。
それに気付いている人間は、一握りしかいなかった。
そして、それを好機だと見る人間は、ただの一人しかいなかった。
とある少年だけしか。