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封印の門  作者: 冬泉
第一章「冒険者集う時」
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封印の門-05◆「麗しの大公女」

■ジョフ大公国/宮殿/大公女の居室→廊下


 レアランの寝覚めはあまり快適とは言えなかった。国の再興以来、休む間もなく陣頭に立って復興を指揮してきた。その成果もあって、混乱の極みにあったジョフ大公国に、徐々に秩序が戻ってきていた。


 レアラン・ルーフィウス・ラ・ジョフ。辺境の小国であるジョフ大公国の主権者である大公女。豊かなブラウンの髪に明るい褐色の瞳のこの娘は、先の大戦(“封印戦争”)でジョフ公家に残された唯一の血筋である。まだ若干十八のレアランは、闇の束縛から解放された後、同様に生き残ったジョフの民を導いて国の再興に努めてきた。


──でも、わたし独りだったら、とてもここまでおぼつかない・・・


 陰に日向に、自分を支えてくれる異丈夫の戦士。慣れぬ会議に色々な気苦労もあるでしょうに・・・。


──それでも、音を上げることなく木訥に自分の役割を果たそうとしてくれている。


 質素なドレスに袖を通しながらも、レアランは気を引き締めた。この部屋を出たら、迷いを見せてはいけない。この部屋をでたら、毅然とした態度で振る舞わねばならない。それが、大公女たる自分に与えられた使命であった。


 部屋を出ると、扉の前で待っていた近衛の騎士二名と女官に付き添われ、レアランは大広間に向かった。途中の廊下で、見知った顔を見つけると思わず笑みを浮かべた。


「おはようございます、大戦士さま。一緒に大広間までゆきませんか?」


 そんなレアランの挨拶に対して、大いに慌てる偉丈夫がここににた。


「だい・・・戦士?」


 情けない小声で反応したグランは、大いなる困惑の色をその無骨な表情に見せながらも、土壇場で立ち直った。


「姫、おはようございます。少しお疲れのようだが・・・俺に出来ることがあったら遠慮なく言って欲しい。」


 グランの指摘に、レアランははっとなった。


 そんなに疲れた表情を表に出してしまっていたのだろうか──もっと気持ちを引き締めなければいけない。レアランは唇を固く引き結ぶと、その表情に笑みを浮かべた。


「ご心配をお掛けしてすみません・・・」


 少し凹んでしまうレアランに、慌ててグランは笑って言った。


「俺も今朝は寝起きが悪かった。お互い様ですよ。」


 そう言いながらも、グランは内心は複雑な想いだった。自分の言葉が余計であったかも知れない――不安を表に出すまいと頑張るレアランに対して言い知れぬ物を感じていたグランは、自分の軽率な言動を後悔していた。


 そんな思いを内に秘めながら、グランはレアランと一緒に大広間に向かった。


──一緒にいられる、この些細な瞬間が永遠に続くならば──グランは本気で願った。


 だが、ふと思う。一度ならず、彼女は奴らに利用され危険な目に苛まれ、一人苦しめられてきた。あの時はこう思った。万が一のときは、神だろうが悪魔だろうが、生きていることを後悔するような目に遭わしてやる、と。


――だが・・・そのとき俺は俺であることが出来るのであろうか・・・


 珍しくくも思考に沈降しているグランを、レアランは心配そうに見つめていた。そんな時、二人に澄んだ声が呼びかけた・・・。




 グランのパートナーであるジョフの大公女、レアラン姫登場です。まだ年若い娘ですが芯は強く、闇に捕らわれていたにも関わらず、強い心でそのトラウマを乗り切っています。唯一の大公家の跡継ぎとして、ジョフ大公国民から絶大の支持を受けています。

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