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封印の門  作者: 冬泉
第一章「冒険者集う時」
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封印の門-04◆「偉大なる戦士」

■ジョフ大公国/宮殿/大公爵の居室→廊下


 あれから数日は経つもののグランは寝不足が続き、朝の気分というものは決して良いものでは無かった。原因は、式典やら会議で剣技の修練や愛馬との遠乗り等の時間は全く無く運動不足が一つにあげられる。


 また、レアラン姫とすら公時の時くらいしか中々会えないのも苛立ちの原因に上げられる。そして最大の理由は生まれてこの方、政治や財政など、その方面に縁が無かった本人が、広いベットの中で「悩み」という名の羊を延々と数え続けていたからであった。


 堅苦しい国政を論ずる会議にも精力的に参加しているのも『あの馬鹿が出来ているなら俺に出来ないはずが無い』と幾人かの古くからの知り合いの顔を思い出していたからであった。


 しかし、皮肉なことに会議の席ではベッドの中とは違って睡魔の猛烈な攻勢に辟易しているのも事実で、いっそのこと会議は夜に行うことと奇妙な意見を出したくもあった。それでも本人の気苦労をよそに、本人以外の活躍で会議は予定通りに進むのが通例となっていた。


 その中で、グランが唯一口を挟んだことは『公正な税制と公正な裁き』だけであったかもしれない。本人が一番必要と考えていたのは、固有の戦力であり、危険極まりない辺境の地で、早い段階で常備軍を組織し独力で警備してこそ、真の自立と考えてはいる。だが理想と現実は数百マイルの差があり、武力と言う前にすることは山積していた。


 そんな事を繰り返しながら・・・また新たな朝を迎えた。時間だけは全ての生きる物に公正に与えられているはずだが、その意見には当の本人は全く納得しないかもしれない。


「何か間違えてないか??」


 浅い眠りから覚めるつど毎回湧き上がる疑問である。本人が望んだわけではないが、やたらと大きな部屋に独り寝には大きなベッド、本当に目が覚めるとそこは薪の燃え尽きた野宿の野営地では無いのかと思うことすらあった。


「くそったれ、もう朝か!」


 とてもこの部屋の客人とは思えない苦言をもらしたものの、何が変わるでもなく、諦めた様子で身支度を始める。本人は、こんな御大層な身分より地獄で悪魔を張り倒していたほうが、余程気楽だったのであろう。それでも、あまりに無様な様子では姫に迷惑も掛かるであろうと精一杯我慢しているグランであった。


 部屋を出て大広間へ向かいかけたが、ふと足を止めると方向を転じた。今朝は何時になく早起きしてしまった事もあり、先に気になる人物の迎えに行くことにしたのであった。だが、目的の部屋に到着する遥か手前で用件を達することになる。幾人かの付き人に囲まれながら、こちらに向かうレアラン姫の姿を確認したからである。その顔にはうっすらと疲労の色が確認され、痛たたまれない気持ちに苛まれる。


「まったく、英雄だなんだと言われていても、彼女の気苦労のひとつも減らすことは出来ないとはな・・・」


半ば口の中で漏らすと、大またで歩を進めた。


「姫、おはようございます。」


 ちょっと他人行儀かと感じつつ、他人の手前でもあり無難な選択をした積りであった。


「少しお疲れのようだが・・・俺に出来ることがあったら遠慮なく言って欲しい。」


 次に出た言葉は、掛け値なしの思いであった。




 アルフレッド・グランツェフ(通称グラン)は、「魔性の瞳」に出てくるテッド・グランツェフの一人息子です。父親に似てがっしりとした体格で、“天の騎士”位を有しています。冒険者の仲間内では“最強の戦士”の誉れが高い漢です。

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