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封印の門  作者: 冬泉
第四章「闇の浸透」
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封印の門-31◆「恐るべき予兆」

■ジョフ大公国/宮殿/大広間


「二人一緒でもいいよん。そうすれば、3●・・・」


『バギッ!!』


 ・・・と、稲妻のような一撃が飛ぶと、不埒ふらちな“放浪の戦士”は完全に沈黙した。 コホン、と咳払いをするのはレムリアだった。振り抜いた右ストレートは、見事に対象(放浪の戦士)を粉砕していた。


「失礼なことを仰るからです。」


 きっぱりと言うレムリア。いや、雉も鳴かずば撃たれまいという所か。理解を超える状況に、誰もが石像のように硬直し、大広間はシーンとしていた。何時でも平静、笑顔を絶やさないレムリアの表情は、今は夕焼けのように紅潮していた。この度を超して冷静な娘に斯様な顔をさせるこの“放浪の戦士”とやらは、希代の天才かもしれない。いや、単なる大惚けかもしれないが。


「・・・気を取り直して、と」


 一発で再起動を掛け、頸をこきこきと鳴らすと、その不埒者は再び話し始めた。不死身か、コイツは?


「冗談はさておき。ボクが事態の背景をキミらよりも知っているのは確かなんだけど、話すことはできないんだよね」

「理由を、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」


 こちらも気を取り直したレムリアが聞く。


「もち、構わないさ。ボクが話すと、大きな障害が起きてしまうからさ。こいつはね、“知らなくてもいいこと”よりも”知ってはいけないこと”に分類されると思うよ」

「・・・それは、時間的な障害かと推察いたしますが?」

「お、流石にお姫さんは鋭いねぇ」

「それならば、聞きたくはありません。未来を変えてしまうのは、わたしの、そしてこちらにいらっしゃる皆さまの本意ではないと思いますので」

「その判断は、とぉっても賢明だね」

「それでも・・・」

「それでも?」

「時間軸に影響が出ない範囲で、お話を頂ければと思います。先程、貴方さまが仰ったことが真実であるのならば──相当な相手が待ち受けていると考えます。ですから、出来得る限りの情報をお聞きしたいと思うのです。宜しくお願い申し上げます」


 やれやれ、と放浪の戦士は肩を竦めると。


「判った、判ったよ。全く、真面目生一本のお姫さまにゃ叶わんな〜」

「恐縮です」


 軽く会釈すると、レムリアは華の様な笑みを浮かべる。


「ま、今回相手方にドレッド・マスター三騎がいるのは、そちらのドラグーンのお三方の言う通りさ。何せ、“天空の騎士”たるドラグーンは、“大地の騎士”たる連中の対極にいるからな」


 そうだろ? と言う問いかけに、ドラグーン達は無言で肯定を返した。


「だがね、本当の脅威はドレッド・マスター達じゃない。もっと強大な悪意が動いているさ。その一端があのオーク・レイダーとなって顕れているというトコだ」

「あくまで、これは呼び起こされた現象の一つに過ぎないと言うのですか?」

「その通り。だからさ、元を断たなきゃ、何度でも同じ様な現象が繰り返されるさ」

「・・・最悪の状況ですね」

「そういうことだね。しかし、それにしても──こんな状況にあって、キミたちは何をのんびりこんなトコで過ごしてるんだい? 大戦士と呼ばれてたあの異丈夫はキミらの仲間じゃないのかい? 何の手助けもしてやらないのかい? いや、見上げた仲間意識だね。“闇”の連中の方が、よほど団結心は強いよ。少なくとも、相手は自分の保身の為に理由を色々と並べて何もしないってことは無いだろうからさ」

「えっ・・・」


 レムリアは絶句した。

 確かに、これだけの面子が揃っていて、今まで議論しただけで、まだ何の結果に結びついていない。

 ふぅ、と一つ息を吐くと、放浪の戦士はよっこらしょと戸口に寄りかかった身体を起こす。


「ボクは行くよ」

「ど、ちらへ?」


 事態を辛うじて追っていたレムリアが聞く。


「“変えさせない”為には、元凶を叩くしかないだろ? キミらがやらなくても、ボクはやるさ。最低限、“変えない”為にね。幾つかの影響はあるだろうけど、その変化に耐えられない訳でもない。もっとも、この時代のキミらが耐えられるかは判らないがね」


 斯様な内容の発言にも拘わらず、放浪の戦士は実に冷静に全てを言ってのけると全員の顔を見回した。



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