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封印の門  作者: 冬泉
第四章「闇の浸透」
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封印の門-29◆「闇の気配」

■ジョフ大公国/宮殿/大広間


「・・・ご丁寧な挨拶、痛み入る。我が名はエリアド。世間では“魔剣士”などと呼ばれているらしい。そして、こちらは、我がパートナー、ヴェロンディのレムリア。御存知の通り、“夢見姫”と呼ばれている。それから、あちらにおられるのが異界からの来訪者であるジャンニ殿」

「高名な“夢見姫”にお目に掛かれて光栄に存じます」


 三人の“龍騎聖”を代表する形で、剣のサッコウがレムリアに優雅に一礼した。

 それに勝るとも劣らず、レムリアが見事な返礼を返す。

 一拍おいて、エリアドが続けた。


「このような危急の際でなければ、いろいろ話したいこともあるのだが、状況が状況なので、そのあたりは先送りにさせていただくことにするが・・・」


 ふむ、とエリアドは心の中で唸った。

 三人の“龍騎聖”が口にした“天の聖域の巫女”とは、自分の認識が間違っていなければ、白き姫君アレゼルのことであろう。


“・・・とすれば、彼らは、アレゼル殿の意思を知る(識る?)ことができると言うことになるが、龍騎聖の三君と天の巫女の間に、如何なるえにしがあるのだろうか・・・”


 疑問は尽きず、また今現在その答えも有るはずがなかった。

 エリアドはこう続けた。


「・・・現在、我らの置かれた状況については、皆それなりに御存知のようだが、これについては、どうやらサリアン殿が一番お詳しいようだ。他に、我らがっておくべきことがあれば、お教え願いたい。他の方々も、必要があると感じた時には、補足をお願いしたい」


 そう言うと、エリアドは入り口に立つ男に軽く会釈を送った。


「いいけど、教える見返りは?」


 理解が難しいような、摩訶不思議な言葉が口にされた。本人は至って平静、にこやかに笑っている。


「み・か・え・り・だよ。わかんないかな? MIKA-ERI、ぎぶ・みー・さむしんぐ・ばっく、戻し入れ、キャッシュバック・・・」

「・・・では、どの様な見返りをお求めなのでしょう」


 その表情にいつもの笑みを戻して、レムリアが尋ねた。


「そうだね、夢見姫。キミがボクと一晩付き合うことでもいいよ」

「一晩、お付き合いするのですか?」

「そう。そのとーり」


 さしものレムリアも、苦笑いを浮かべて言った。


「別の条件をお伺いした方が宜しいでしょうね」

「駄目なのかなぁ?」

「駄目でしょう」

「そっか。なら、情報提供しない」

「それは、困りましたわ」

「だろ? だからさ、解決策は簡単だよ。一晩、ボクと一緒にいるだけさ」

「・・・倫理観の問題かと思うのですが、貴方にはそのような概念はありませんの?」

「気分次第だね。もっとも、貴女みたいな美人を目の前にして、何もしないというのは僕の理念に反するよ」

「理念・・・ですか・・・」


 “賢女”の誉れも高いレムリアが、珍しくも“困りました”という表情を浮かべた。


「・・・サリアン殿。もしも私やレムリアのことを試すつもりなら、そのくらいにしておいてください」


 唇の端に皮肉っぽい冷やかな微笑みを浮かべて、エリアドが合いの手を入れた。


「まぁ、言葉通り、『あなたがレムリアと一晩一緒にいるだけ』なら、私はかまいませんけれどね。むろん、私はその言葉以上のことをさせるつもりはありませんし、その場には私もご一緒させていただきますが。

 『この世界と彼女とどちらが大切か?』 なんて野暮なことは聞かないでくださいね。私には、どちらも大切なのものなのですし、まだ、この身を“闇”に投じるつもりはないのですから」


 少しだけ考える振りをすると、エリアドは良い考えが浮かんだとでも言うように続けた。


「・・・そうですね。代わりに、私が一晩お相手する。などという条件ではいかがですか?」



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