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封印の門  作者: 冬泉
第三章「公国軍の奮闘」
29/32

封印の門-30◆「全軍出撃」

■ジョフ大公国/宮殿/大手門


 グランは、自分の思っていることを素直にぶつけようと思った。


“今は自分にしか出来ないことをしよう、それで良いですね姫”


 守るべき対象が傍に居ない不安や不満も、今は微塵も見せなかった。響めきが収まるのを待ってからいよいよ話を始める。


「ジョフ臣民並びにコーランドの友に告ぐ。私はジョフ公国軍総帥アルフレッド・グランツェフである」


 やや冷たい口調で始まったが、他を圧する声が朗々と広がる。


「諸君らが知ってのとおり、この国は復興途中であり、戦に対して十分な準備はされていない。今回、北方から進入したオークどもの戦力は報告では約1万、対する我らは友邦コーランドの軍勢を含めても5千である」

 

 言葉を区切ると全軍を大きく見やる。


「しかし、そう悲観するな。勝つための手段は既に考えてある。それに、レアラン大公女並びに私自身も陣頭に立ち戦闘に参加する。此処にて誓う、今後我らは共に戦い、諸君達だけに無益な戦闘はさせないと!」


 大きな声が全軍の中に木霊す。


「我が国臣民並びにコーランドの友よ、決死と必死は違う。諸君も私に誓って欲しい、決して無駄に死なないと!生きてこの戦いの後、我が友として再び此処に集うと!」


 グランの口調は段々と熱を帯びていく。


「今生の行いは永遠に記憶されるであろう」


 おもむろに背中の大剣を引き抜くと、天に掲げて誓った。


「天の神々よ我等の戦いを御照覧あれ。全軍出撃!!」


『おぉぉぉっ!!!』


 再び、どよめきが公都前に沸き起こった。

 今度は、コーランド軍の将兵も一緒になって叫んでいる。


「流石は大戦士殿。我が軍のみならず、友軍の事も考えて下さる」

「それについては、何らの疑念も有りませんでしたよ」


 心配性の気がある無骨な騎士に、コーランドの近衛騎士がふんわりと笑って言った。


「それでは、私は我が軍の重騎兵を率いてHORNWOODに向かいます。大戦士さま、ジャン・バルトさまもご武運を」

「貴軍の武運長久を心より祈る」

「レスコー殿、お気を付けて。ご武運を!」


 馬を早駆けにさせると、トリアノン・レスコーは自軍の所に向かった。


颯爽さっそうとした中にも優雅さを失わない──そんな、素晴らしい騎士ですな、レスコー殿は」


 その後ろ姿を観ながら、噛み締めるようにジャン・バルトが言う。

 他国の所属とはいえトリアノン・レスコー、そしてLAG筆頭騎士ャン・バルトの二人に、グランは非常に期待していた。この戦いの後に酒を酌み交わすことが楽しみでならなかった。そんなトリアノン・レスコーに対するジャン・バルトの台詞に、グランは笑いながらジャン・バルトの肩を叩いて言った。


「まだまだ我が軍では、優雅さに於いてコーランド軍には及びも付くまいよ、当然ながら俺も含めてだが」


 それほど長い演説ではなかったが、グランはかなりの疲労感を覚えた。鞍の上で半ば立ち上がっていた腰を鞍に再び収めると、控える忠実なLAG騎士ジャン・バルトに気づかれないように大きく溜息をついた。


“まだ今日は半分しか終わってないのによ”


 体力勝負ならまだしも、会議から此処まで精神の糸は極度に張り続けていた。


★ジョフ/コーランド軍編成(ジョフ戦役開始時)

挿絵(By みてみん)


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