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封印の門  作者: 冬泉
第三章「公国軍の奮闘」
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封印の門-26◆「心の迷路を抜けて」

■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋→廊下


 グランの心境は別にして、時の流れは全てに無感動に、無関心に進んでいく。無慈悲な時間の流れは、“時の大神”レンドールにもままならないものなのかも知れない。


 足音高く回廊を歩くグランは、突き刺す様な胸の痛みを抱えながらも、遮二無二前に向かって歩いていた。本人自身も一体何処へ向かっているのか――後を追っかけてきたジャン・バルトに呼び止められるまで判らなかったのかも知れない。


“今、姫の思いに答えるにはこれしかないのか。一番大切なことは軍を統率して勝利に導くこと、それだけを考えよう。俺にはそれしか出来ないし、誰に替わる事も出来ないのだから”


 敢えて自分の心の痛みを無視すると、グランは奥歯がへし折れるほどかみ締めた。そうでもして自分を戒めないと、叫び出しかねなかった。


「大戦士殿!」


 すんでの所で、グランを凶行から思い留まらせたのはこの人。ジョフ親衛隊の隊長であるリオン・ジャン・バルト、通称“ロック”(岩)だった。その渾名の通り、頑固一徹で融通が利かない反面、その忠誠心は忠臣の中でも群を抜く。

 そのジャン・バルトは大股で歩くグランに追いつくと報告した。


「宰相閣下より、軍の方を頼むとのお話しでした。公都前に、LAG(親衛隊)を初めとする全戦力が集結しております。大戦士様、そちらへ参りましょう」


 話している最中に、後ろから軽い拍車の音を響かせて、コーランド北遣軍司令官トリアノン・レスコーが追いついてきた。


「お二人とも、早足ですね」


 事態が修羅場であれどうあれ、全く動じた様子もなく笑顔で話しかけてくる。その平常心たるもの――伊達にコーランド王国の近衛騎士を拝命してはいない。


「私たちの部隊にも集結するように指示を出してあります。ご一緒致しましょう」

「・・・」


 グランは、ジャン・バルトにも、そしてトリアノンにも一言も返さなかった。だが、話を聞いている証拠に、グランの足は公都正門に向かっている。

 ジャン・バルトとトリアノンは互い顔を見合わせると、無言で歩くグランの後に従った。先程の状況を思い起こすと、二人は大戦士の心中を察してはいたが、今や国と民の要ともなったこの人物に、奮起を促さねばならない必要もあった。


 さて、此処まで沈黙を守っていたグランだったが、その心の中には一つの引っかかりがあった。


『キミらには難しい相手が向こう側に付いたってことだろうね』


 “放浪の戦士”と名乗った相手の、この台詞が頭の中から消えなかったのだ。


「・・・」


 幾ら考えても、今はようとしてそれ以上が判らなかったのだが。

 漸く、本編が三分割する所まで辿り着きました。思いの外時間が掛かり、お待たせしてしまって済みません。今後は、各章ごとに更新していきます。宜しくお願い申し上げます。

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