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封印の門  作者: 冬泉
第二章「開戦前夜」
23/32

封印の門-22◆「公都に御旗を」

■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋


 話は出揃ったようだ。グランは深く息をつくと、走り書きした自分のメモを見ながら最終的な決定を下した。


「まず敵正面に布陣し、最も重要な任を帯びる部隊は次の通り。

 ジョフ公国軍装甲歩兵連隊     350名

 コーランド北遣軍重歩兵第三連隊 1000名

 コーランド北遣軍軽歩兵第六連隊 1000名

 コーランド北遣軍軽歩兵第八連隊 1000名 

 総兵力3,350名。


 次、HORNWOOD方面に布陣する機動軍。

 コーランド北遣軍重騎兵第二連隊  500騎 

 司令官はトリアノン・レスコー殿。


 次、OYDWOOD方面に布陣する機動軍。

 ジョフ公国軍LAG          17騎

 ジョフ公国軍中央軍装甲騎兵連隊  120騎

 ジョフ公国軍軽騎兵第四連隊    350騎

 指揮は私が直接行う。


 ジョフ公国軍軽騎兵第二連隊400騎は万が一に備え公都方面へ移動しておくこと。

 後方及び総参謀長としてカイファートを任ずる。

 ジョフ公国軍飛翔連隊 3騎はカイファートの配下とし、情報収集に努める。


 さて、最大の問題だが一番の苦戦を強いられる敵正面守備隊の指揮官だが、我と思うものはいるか?」

「その任、わたくしが引き受けましょう」


 澄んだ声には、欠片も迷いが感じられなかった。瞳に強い輝きを宿し、ジョフ公国大公女レアラン・ルーフィウス・ラ・ジョフはその決意を述べた。


「大公女の旗を戦線に掲げれば、兵にも公国民にも励みとなりましょう。そして、それは大公家の者の勤めでもあります」


 その言葉には、意思の力が強く感じられた。聞いていたLAG筆頭騎士ジャン・バルトが一つ頷くと、口を開いた。


「大戦士殿。大公女殿下を補佐する為、LAGより当方を正面戦線に配置ください。お願い申し上げます」

「・・・はぁ???」


 流石にグランも、こればかりは読んでいなかった。ジャン・バルト、カイファート、トリアノン・レスコー、と優秀な騎士、幕僚、友軍司令官に恵まれてはいたが、それぞれの持ち場があり、また戦線正面はジョフとコーランドの混成部隊になる為、悩んだ結果指揮官の推挙を問うたのだが・・・。


「・・・・・・」


 暫くの沈黙の後。


「レオン・“ロック”・ジャン・バルト、卿を我がもとより離すのは百騎の精鋭を失うに等しい。だが大公女を守る任は、それに変えられないものであろう。頼むぞ!」

「有り難き幸せ。我が命に代えましても、大公女殿下はお守り申し上げます」


 立ち上がると、深々と頭を下げるジャン・バルト。少なくとも、百戦錬磨の筆頭騎士が付いていてくれれば、とグランは思った。そもそも、国の元首であるレアラン自身が“陣頭指揮を執る”と言った場合、一体誰が止められるのか。正直、グランは頭痛がする思いだった。

 何はともあれ、釘だけは刺しておかねばなるまい――心の中で溜息をつくと、グランはレアランの視線を正面に受け止めて言った。


「一瞬でいい、チャンスを作ってくれれば必ず私が敵を粉砕する。信じてくれますね」

「はい。元より兵法の知識も有りません。足手纏いにならないように、旗だけを持って頑張ろうと思います。それに、ジャン・バルトが来てくれるので有れば心強い限りです。大丈夫――大戦士さまとレスコーさまが相手の後方を断って下さるまで、精一杯戦線を支えましょう」


 微かな笑みを浮かべて、レアランは静かに言った。気負いも迷いもなく、ただ自分が為すべき事柄を理解している──そんな表情だった。


「私からも、出来得る限りの後方支援に努力しましょう」


 その場をカイファートが引き取った。


「では、大戦士殿。作戦開始の下知を頂けますかな?」

「うむ」


 グランは厳粛にカイファートの言葉に続ける。


「私の求めるものは勝利か死ではない」


 周囲を見渡した後。


「勝利か・・・より完全なる勝利である!」


 甚だ大げさだと思いつつ、士気を鼓舞するのも責任者の役目と思って恥ずかしいものを我慢して、グランは思いっきり言ってのける。


「一時の準備の後、全軍城外にて集結。閲兵の後にそれぞれの持ち場についてもらう。以上、解散!!」


 かかとを鳴らすと、満座に対して敬礼をした。



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