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封印の門  作者: 冬泉
第二章「開戦前夜」
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封印の門-19◆「己の勘を信じて」

■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋


「・・・」


 無言で事態の推移を見守るヒラリーの耳に、静かな囁き声が届いた。


「唐突だね。なにやら焦臭いなぁ」

「思うところがあれば、皆に言うが良い」

「単なる勘所なんだけどね・・・」


 語尾を濁す相手に、ヒラリーは横目で厳しい視線を送った。


「何かを感じたのならば、はっきりと言えばいい。」

「いやね・・・数を出しての陽動、だが実際の目的は別物って考え方もあるってことさ」

「根拠は?」

「無いさ」

「・・・」


 訝しげに向けた鋼の瞳に、酷薄な笑みが飛び込んでくる。


「冗談を言ってるのでは無いな?」

「“己の信ずるコトを為せ”──“灰の預言者”の言葉さ。久し振りに、その実践の時が来たってとこだね」

「・・・ならば、判った。我らは、独自に調べるとしよう」

「そう来なくちゃ」


 少しは真剣になれとばかりに相手をひと睨みすると、ヒラリーは立ち上がって全員に向かって言った。


「済まないが、思うところがあるので我らは別行動とさせて貰いたい。斯様な事態に、戦力を分割する愚は十分に理解している。だが・・・」

「ちょいと感じるところがあってね」


 皮肉な笑みがディンジルの口元に浮かぶ。


「それを解明しないと小心者の私は、枕を高くして眠れないからね。それにね、寝不足は美容の大敵だからね。お嬢さんも肌の曲がり角。それもすごく心配で・・・」


『ゴキッ』


 凄く痛そうな擬音がして、くたっとディンジルが地面に沈んだ。その痛ましい(?)姿と米神に青筋を立てたヒラリーを、皆はなるべく見ない様に顔を背けた。


「・・・それでだ。我が儘を言わせて貰って恐縮だが――この者は実に自堕落でちゃらんぽらんだが、嗅覚と感だけは動物並みだ。今は、それを信じてみたい」


 ヒラリーはそう言うと、皆に頭を下げた。


「紫の騎士さま、その様な事をなさらないで下さい! 皆さまが、本当に必要な事を為される――それが、引いては今の状況を打開する可能性を広げると、わたくしは思います」


 毅然と言うレアランに、今一度ヒラリーは頭を下げた。


「ご理解頂き忝ない、大公女殿下。必ずや、我らなりの打開策を見出そう。ディンジル、行くぞ」

「はいはい。そう言うことで、ちょいと失礼しますよ」


 何時の間にか復活していた不良青年は笑みを浮かべて事投げに言うと、生真面目な麗人の後に続いて戸口から出て行った──いや、戸口で立ち止まると振り返って言った。


「エリアド、ジャンニ。そう言うことだから、あんたらはお姫さんとグランの助力を頼むよ」


 ヒラヒラと手を振ると、慌てず騒がず、先に出て行ったヒラリーの後を追った。



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