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封印の門  作者: 冬泉
第一章「冒険者集う時」
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封印の門-15◆「剣豪並び立つ」

■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋


「龍騎聖か。頼もしい連中が馳せ参じてくれたものだ。早急に俺も挨拶を済ませたいので段取りを頼む。・・・しかし、」


 グランは宰相の顔を眺めながら、些か意地の悪い表情を浮かべて続けた。


「世の中には、強い連中がまだまだいると言う事だな?」


 笑ったつもりが苦笑いになってしまう。


「御冗談を。貴公あなたを含めて、私より強い人は、まだいくらもいますよ。」


 苦笑いを浮かべるグランに、エリアドは微かに苦笑する。


“やれやれ。また彼は、自分のことは棚にあげてしまっているのだな。ジョフに眠る“最強”の称号とその技を手にしたのは、さて、どこの誰でしたっけ、ねぇ。・・・まぁ、それにしても。”


「・・・“龍騎聖”・・・ね」


 エリアドは小さく呟いた。彼の気持ちは、まだ会ったことのない3人の龍騎聖──とりわけ“剣の”と呼ばれるほどの使い手であるサッコゥ──に向いていた。


「・・・」


 エリアドの反論に、グランはしばらく自分の考えに没していた。


“まぁ奴らしい論法だが、いまの俺に奴を超えることは出来ないだろう・・・俺の知っている限り、特に身近なところではパワーでは親父に勝てず、技ではエリアドに及ばず、テクニックでは魔法を絡めたラダノワ卿の戦闘に及ばず、そしてヒラリーにも及ぶまい・・・敢えて勝る面があるとすれば『悪運の強さ』だな!”


 確かに、グランには先日身に付けた秘剣がある。だが、グランには『あれ』は借り物のような気がしてならなかった。また大砲をぶっ放すような感じもありギリギリまで使うことは無いと考えていたのである。


“それに、使うときは俺流にアレンジを考えておかないとなぁ”


 そう思うと、グランは気を取り直してにやりと笑った。


「今まで知らなかったとしても、今知ってしまえばいいことさ」


 それは、如何にもグラン流の考え方ではあったが・・・。


「何故に、人は“強い”か──古来から、多々問われた命題でもありますな」


 カイファートは、両目を細めると薄い笑みを浮かべた。


「単に腕力だけでは無い。ましてや、剣技や帯びているモノ故でも無い。真の強さは、別の所に在ろうかと思いますぞ」


 その言葉に、レアランが大きく頷いた。その表情には、嬉しそうな笑みが浮かんでいる。


「“漢”たるもの、己の行くべき道こそを見失うことなかれ──私は、斯様に思っておりまする」

「“漢”たるもの・・・か」


 グランは、己の能天気な発想を吹き飛ばした後に呟く。


「言うは易し、だな。特に俺のような奴の場合は如何にその能力を発揮するかが重要だと思うし、また誰のために使うかだ・・・少なくとも今の俺に迷いは無いよ」


 笑顔で話をまとめると、グランは視線をレアランに向けた。

 そのレアランは、黙して皆の話を聞いていた。元より剣技に暗いレアランには年若く経験不足もあって、グランが自分の何を不甲斐なく思っているかはっきりとは判らなかった。


“わたくしは、側にいて下さるだけで、とても心強いのですけれども・・・”


 公国民もジョフ復興の原動力となった“大戦士”の存在を心強く感じているに違いないと思うのだが、そんな自分の考え方は思慮が浅いのだろうか──グランの表情を見ながら、少し胸が重く感じるレアランだった。


 話が一段落し、グランが自分に笑顔を向けてきた。その雄々しい表情を見ていると、心の重みもすっと解消されていくかのように感じる。笑顔に微笑みを返しながら、レアランは強く想った。


“心配しないで下さいませ。貴方の笑顔は、貴方の存在はこんなにもわたくしを勇気付けてくれています。だから──御自分に自信をお持ちになって。貴方は、今でもこんなに大きな存在なのですから”


 グランは、レアランの微笑みに自分の内面を見透かされた思いだった。


“そうさ、俺が求める力とはたった一人を守り通せるだけでいいんだよな…もっとも国やら国民も付いてきてしまうんだが・・・まぁ、いいか!”


 如何にもグラン的に考えを帰結させると、レアランに豪快な笑みを返した。



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