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封印の門  作者: 冬泉
第一章「冒険者集う時」
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封印の門-09◆「嵐の前の静けさ」

■ジョフ大公国/宮殿/大広間


 グランは部屋に入りながら改めて幾人には挨拶を繰り返した。そして自分の席に腰を下ろすと周りの面々を暫し観察する。と、言うよりそうせざるを得なかった節もある。

 特にヒラリーらのやり取りを見ていると、なんともコメントのしようも無かったが、あれはあれで似合いのカップルなのだろうと考えることにした。まぁ、自分にとってはレアランで良かったと、つくづく思ってはいたが・・・。


 レアランとは、此処まで些か遠回りをしてきたせいもあるが、自分が駆け出しの戦士だった頃からの想いがあり、筆舌しがたい選択を強いられた事もあった。それを思うと、今がなんとも平和な一時だと心から思うのであった。


“しかし、良くもこれほどの連中が力を貸してくれたものだ”


 柄にもなく感謝の念が浮かぶ。あとは此処には居ない盾の騎士連盟(Shieldland)の『将軍様』の事も脳裏をよぎる。


“あいつもそうだったように、いま此処にいる連中も時を経ずして各々の旅に出て行ってしまうのであろう・・・”


 自分自身、戦士と言う看板を掲げてからは、一箇所に定住することを望まず、また考えもせず流浪を重ねてきた。それが目的達成の為であったとして、現在の現実を頂点と考えハッピーエンドの幕切れを意味することなのか。自由に旅立てる友人を、羨ましく思うのが罰当たりだと思いつつも、そう見てしまう事は否定できなかった。


               ☆  ☆  ☆


 ジャンニが入室して席に着いたのを見ると、レアランはそっと立ち上がると、朝餉の席に着く客人全員に笑みを向ける。


「皆さま、おはようございます。今日も、素晴らしい一日となりそうですね。ごゆっくり、朝食を召し上がって下さいませ。」

「お気遣い無く、レアラン大公女殿下」


 そつなく返すのは黒の剣聖。どこで鍛えたのかは知らぬが、こういった社交辞令にはめっぽう強い。その隣で、素知らぬ顔をしてヒラリーが優雅に紅茶のカップを傾けている。


「我々一同、斯様に心安らぐ席を設けて頂き、そのお心遣いに感謝の念に耐えま・・・」


 ボグッという鈍い音と共に、その如何にも見え透いた軽薄な言葉の羅列が唐突に途絶える。机に突っ伏した黒の剣聖にちらりと視線を振ると、紫の騎士は冷たく言い放つ。


「長広舌を振るうな。」

「誰がだい、ハニー?」

「貴様のことだ。クリティカルヒットチャートで即死が出ているのに、ケロリとした顔で甦ってくるような、一人人外魔境のことを言っている。」

「ははは、誉めるなよ〜」

「その所行に、“自意識過剰”と言うのも加わったか」

「うふふふ、もてる男は辛いね」


 ヒラリーの皮肉も、全く効き目の無いディンジルであった。


          ☆   ☆   ☆


 一方、“夢見姫”とは別々に大広間にやってきた“魔剣士”は、静かに彼女の隣に腰掛けた。


「おはよう、レムリア」

「おはようございます」


 横目で“命懸け”とも思えるヒラリーとディンジルのやり取りを見やるエリアドの表情には、呆れた様な笑みが浮かんでいる。


「・・・彼もタフだね」

「喜んでおやりになっているようにも思えますけれども・・・」


 存外、レムリアの言う通りなのかも知れない。


“・・・もっとも、本当にヒラリーの突っ込みを受けているのであれば、という条件つきだが・・・。”


「・・・それにしても、久しぶりのグレイホーク──銀龍亭でのグランたちとの再会──から始まった旅も、もう半年近くにもなるのか・・・。その間、いろいろなことがあった・・・な」


 そんなことを思いながら、エリアドはレムリアに微笑みかけた。



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