表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
navy moon ー月はいつも丸いー  作者: A.O.C.DESIGN
第二章 Soupe 流れゆく永遠
8/24

第八話 カイへの手紙(2024)

カチ、カチ。

古い時計が刻んでいる。


十年。


長い時間。

エルアンがクアメに手紙を送ってから。

返事は返ってこなかった。


「覚えていますか。」


覚えている。

頭の隅にはいつもあった。



あの畑の葡萄。

このワイナリーのフラッグシップが、

もう作れない。


チョコレート事業への転換。


それは、すぐに浮かんだ。

だが、別の道を考えた。


アフリカの畑。

赤土の匂い。


風。

光。

影。


ー なぜ、ここに来た。

ー 買いに来たのではないのか。

ー いいえ。

ー 作りたいのです。


ー なぜワインをやめて、ここへ?

ー やめていません。


クアメとの会話。


ビーントゥバーの流行。

チョコレート事業を視野に入れている。


全て話した。


だが、クアメは頷いていない。

状況を説明して協力を….


クレールが口を開いた。


「アフリカはアフリカ。

フランスはフランスよ。」


原因は、地価の高騰。

アフリカの土地ではない。


これは、フランスの問題。


ワインの相場。

土地の相場。

変わる数字。


石灰岩は、変わらない。



エルアンはペンを執る。

慎重に言葉を選ぶ。


「私は私たちの土地を守らなければならない。」


その手紙を送った。



カチ、カチ、カチ….


時が流れる。


月が昇り、

沈む。


カイは二十歳になっている。

彼はもう理解できる。



ガタン。


椅子を引く。

腰を掛ける。

白い紙を置く。


カイに宛てて、手紙を書く。


「忘れるはずがありません。

もちろん、覚えています。」



カイは知りたいと思っている。


あの時の状況。

なぜ止めたのか。

判断の理由。


そして、今、アフリカの畑の危機。

チョコレート・ショック。


エルアンは、丁寧に文章を書き進める。



最後にカイへ。


迷うとき、私は目を閉じる。


それでも決まらないときは、目を開けて枝を見る。


真っ直ぐな枝は、誰もが残したがる。


だが私は、曲がった枝を選ぶ。


風に押され、光を探し、回り込んだ枝だ。


その曲がり目は、固くなっている。


そこから出る芽は、意外に強い。


  ー エルアン・ロシュより



石灰岩の畑に、太陽の光が差す。


エルアンは目を細める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ