第二十七話 オリジナリティ
ブルゴーニュの朝。
青い空。
畑は白い土と、緑の草。
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白い石の家。
窓から光が差し込む。
部屋の扉。
月が彫られた木板。
ルナとマナはベッド。
サラはソファの上。
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リビング。
昨夜のワイングラス。
空のボトル。
ローランはソファ。
部屋の隅にレオン。
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皆、すやすやと寝ている。
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キッチン。
クレールとエルアン。
後片付けと朝食の準備。
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ダイニング・テーブル。
デニッシュが並ぶ大皿。
林檎と柑橘の籠。
コーヒーと紅茶のポット。
カップとソーサー。
「さて、みんなを起こすとするか。」
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朝食。
マナとサラの目が輝く。
「美味しそうー。
あまーいデニッシュの朝、最高ー。」
「マナさんはやっぱり紅茶?
私はコーヒーかな。」
レオンとローランは顔を洗っている。
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「コンペのチョコの試作をする?」
エルアンがコーヒーのカップをテーブルに置く。
「お父さんに見てもらいたいの。
時間が掛かりすぎてて、たくさん作れなくて。
コンペは2時間で同じものを10個。
今のままだと、間に合わないの。」
「なるほど、今日は時間があるから、見てあげられる。
大丈夫だよ。」
「よかった、ありがとう。」
エルアンは腕を組む。
「ふむ、なぜ時間が掛かるか、だな。
なんでだと思う?」
「石がね、冷たくなってしまうの。
油脂が出てこない。」
「ふむ、そうか、やっぱり。
私もそれが一番の問題になると思う。」
「コンロのそばで作業すればいいのかな。」
エルアンはペンを持つ。
「農家での調理だと、火は主に焚き火だ。
大きな石を三つ組む。」
白い紙に、絵を描く。
「だが、石を積み重ねれば釜戸にできる。
オーブンが使える。」
火を囲む石。
その上に石の棚。
「これがあれば、作業効率が大幅に上がる。」
ルナの目が広がる。
「……そっか!
アフリカでも、チョコレートを作る未来になっていれば、
そのためのオーブンが、きっとある!」
ルナは考える。
「……オーブン・トースター。
それで充分、足りる。」
エルアンは微笑む。
「あとは、作業のコツだけアドバイスしよう。」
紙をもう一枚。
「粒の大きさをできるだけ均等にしながら小さくする。
たぶん、これでかなり時間を短縮できるだろう。」
「……うん。」
「丸い石で叩いて砕く。
そして石を転がす。
上から押して、潰すように擦る。
小さな粒や粉が出てきたら、別の器に分ける。
大きな粒だけにして、また叩く。」
「……うん。」
「茶漉しがあれば簡単だな。
だが、それがある未来なのか、ない未来なのか。
君が考えるべきことだね。」
「……うん、やってみるね。」
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「どうも、お世話になりました。」
頭を下げるサラ。
「お邪魔しましたー。
また来まーす。」
手を振る三人。
車で出発。
ブルゴーニュ観光へ。
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手を振るルナ。
エルアンとクレールも。
「よし、じゃさっそく始めよう。」
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夕方。
ルナはソファに沈む。
エルアンが横に座る。
「お疲れ様。」
「……」
「材料が、もう無いな。
今日はここまで、だな。」
「……」
「改善点が見えてきて良かったな。」
「……」
「まだあと10日以上はある。
間に合うさ。」
ルナは横になったまま。
「……うん、お父さん、ありがとう。
ちょっと休んだら、出発するね、パリへ。」
「車でディジョンまで送るから、しっかり休みなさい。」
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ブロロ…
車の中。
ルナは外を眺める。
「ね、お父さん。
アフリカには、バターもクリームも無いのよね。」
「……高価だ。
赤道の当たりは、酪農ができないからな。」
「パームの油は、他の国で議論されているの。」
「反対意見が強まっているようだね。」
「どうやったら、まとまるんだろ。」
「……」
「割った時の音と、香り。」
「……」
「昨日の象さんのチョコみたいに…
どうやったら、なるのかな。」
エルアンは黙る。
ルナは外を眺める。
「……ねぇ、お父さん。」
「何だい?」
「……アフリカの、カカオの畑。
大丈夫なのかな。」
「ん?
……あぁ、見せてあげれば良かったな。
先日、アフリカから手紙が届いたんだ。
クアメから。
写真も入っていた。」
ルナはエルアンを見る。
「え!
そうなの?
どんな写真?
みたい!」
「頑張っているようだよ。」
エルアンは笑顔になる。
ルナに目を送る。
「写真は後で送るよ。」
ルナの視線が上がる。
車のシートに、腰を掛け直す。
「私も、頑張る。」
エルアンは頷く。
「その意気だ。」
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2月28日。
一次審査締め切り。
3月10日。
通知。
一次審査通過。
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時は待たない。
移りゆく。
月の光。
影。
満ちては欠ける。
だがいつも丸い。
新月から上弦へ。
西の三日月は、
東の満月へ。
時は過ぎゆく。
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3月27日
作品仕上げ。
最終段階。
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ルナの瞳。
大きく輝く。
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