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navy moon ー月はいつも丸いー  作者: A.O.C.DESIGN
第五章 Dessert (タイトル未定)
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第二十三話 パリッ -グラズール-

ローランが目の前にいる。


ホット・チョコレートを持っている。


あぁ、湯気。

あったかそうだな〜。


「ルナ、これやる。

飲んでみて。」


「え、いいの?

ありがとう。」


断熱カップ。

ほんのり、あったかい。


顔が緩んじゃう。

目が垂れてるかも。


カカオの香りが、広がるー。


「ふくるるわ〜…」


「…ふむ、なるほど。

これは、ふくるるわあ、そんで、伸ばすってことか。」


ん、ローランが何か言ってる?


「いただきますー。」


うん。

ちょうどいい温度。


んんー。

甘め。


ゆっくり口に広がってく。

濃厚なタイプだぁー。


こくん。


「…んー。」


体、とけるー。


「はぁ〜、トロ〜ん。」



ルナは少しだけ、首を傾げる。



「なるほど、トロ〜ん。

これは普通っぽいな。」


「あー、ルナ、ショコラ・ショー飲んでる。

良いなー。

ひとくち、ひとくちー。」


「マナ、これローランにもらったの。

ローラン、マナにひと口あげていい?」


「あぁ、いいよ。」

「はい、マナ。」


「やたー。

いっただきー。

…んぐ。

…んぐ。」


「あー、マナ。」

「ぷは。

おいしー。」


「ぜったい、今のひと口じゃなかったー。」


もう、やっぱりなー。

でも、もらったものだもんね。

それにしてもローラン、何だろう。

メモってる?


「ローラン、ルナに一杯おごって、何か裏でもあるの〜?」

「ん?

あぁ、ルナの言葉の研究。

なかなか面白い。」


あー。


そういうことかー。

私、無意識に声が出ちゃうんだよね。

お父さんにも言われてた。

気をつけないと、変なひとだと思われちゃう。



放課後の実習室。


四名集合。



「はーい。

じゃみんな良い?

始めるわよー。」


「だからなんでお前が仕切るんだよ、マナ。」


「あたしが進めないと、みんな喋ってるばかりで時間の無駄になるでしょ。

得意なのよ。

進行役。」


「マナさんは、合理的思考、且つ統率力に長けたリーダー的存在デス。」


「ふふん。

レオンは良くわかってるわね。

組織っていうのは、指揮者が必要なの。

トップに立つのってみんな憧れるけど、逆にみんな嫌がるものよ。

嫌われるのが怖い。

でもあたしは、それをわかった上で、そういう役に立つのよ。」


「私は、マナのそういうとこ、良いなって思う。」


「うん。

ありがとう、ルナ。

あたしは、ルナの可愛いとこが大好きよ♡」


ガララ。


「みんな揃っているようね。」


「あー、サラサラ。」

「サラ先生。」


「コンペティションの募集要項、持ってきたわ。

内容は話していた通りだけどね。

ちゃんと読んでおいてね。」



レオンが何か持ってる。


「みなさん、僕が作ったスイーツ、デス。

試食してみてください。」


「これは、ザッハトルテね。

見事なグラズール。

上手にできたわね。」


「昨日作りました。」


ザッハトルテ。


授業でやったのよね。

ザッハグラズールっていうんだっけ。

あれ、難しかったなー。

特訓してやっとできた。


座学を学んで、その一週間後に実習だったなー。



カッ、カカッ、カ…


ボードにチョークの文字。


『商標登録』


「ザッハトルテは、二種類あります。

フランツ・ザッハーが作ったオリジナルと、

販売権を獲得したデメル家のものが存在し…

甘い戦争と呼ばれ…」


「商標権は、現在とても重視されています…」


んー、難しいなぁ。

二種類あるってことは、三種類目はないんだよね。

何でないんだろ?


うーん、甘い戦争かぁ。


「…ルナさん。」


「あ、はい。」


やば、見つかっちゃったー。


「ユニークな絵ね。

鉄砲と、大砲と、キャンディと、トリュフ、プラリネ。

そうじゃないのよー、ルナさん。

甘い戦争って。」



あー、思い出しちゃった。

あれ、恥ずかしかったなー。


「ルナさん、どうぞ。」


レオンのザッハトルテだ。


「うん。

ありがとう。」



ルナは皿を両手で持ち上げる。


目線の高さ。


ぐるりと一周。


上の面を見る。


顔を近づける。


目を閉じる。


息を吸う。


吐く。


皆が様子を伺う。


「ショロンクルル…ワ〜。」


「……」


「…ショロン…何だって?」

ローランはメモを取る。


「本当にケーキと会話しているみたいね。」

「だよね、サラサラ。」

「僕も一緒に会話したいデス。」


「はーい。

それじゃみんな、試食してみよっ。」


「いただきまーす。」


マットなコーティング。

上品な光沢。


フォークの横側を当てる。

ゆっくり下へ。



パリッ。



一瞬、音だけが残る。



ルナの目が、わずかに開く。



砂糖の結晶とチョコレートの結合が作る層。


薄く、軽い。


だが、強い。



「……これ。」


ルナは断面を見つめる。


指先で、そっと触れる。


「……つながってる。」



「うん、これ。」


「ありがとう、レオン。」


「……これ、欲しかった。」


レオンは微笑む。


「ルナさん、お役に立てたようで光栄です。」


「ん?なになに、どういうこと?

ちゃんと説明してよね。

曖昧だとわかんないじゃない。

ねぇ、サラサラ。」


「……何よりもまず音楽を…ポール・ヴェルレーヌ…」


「あんたに言ってないわよー。」


「ふふ、マナさん。

このザッハトルテ、本当に美味しいわよ。

パリッとして、シャリシャリしてるわ。」


「うん。

おいしー。

レオン、さすがねー。

あー、あたし紅茶淹れてくるねー。」


「おーいマナー。

進行役はどうしたー?」


「紅茶、紅茶。」


「おーい。」



テーブルの上。


紙が一枚。


募集要項。



ー公募ー

チョコレート・コンペティション

「未来のチョコレート」


未来のチョコレートはどんなチョコレート?

一般参加を含む多くのアイデアを広く募集します。


部 門:

 ① 完成品部門

    チョコレートを使用した製菓 1種10点

    当日2時間以内で作成

    審査:審査員による試食及び投票


 ②コンセプト部門

    テーマに沿ったアイデアのプレゼンテーション

    当日10分間の発表

    審査:審査員による審議及び投票


 一次審査 事前にレポートを提出

      期 限:2026年2月末日


対 象:現役パティシエ、ショコラティエ

    学生、一般参加可


公開審査 開催日時:2026年3月30日 15:00開始

     場  所:フランス芸術学院パリ製菓専門学校


最優秀賞 各部門 1点(賞金 1000ユーロ)ほか


主 催:フランス芸術学院パリ製菓専門学校


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