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navy moon ー月はいつも丸いー  作者: A.O.C.DESIGN
第五章 Dessert (タイトル未定)
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第二十二話 甘い挑戦

夜明け。

ブルゴーニュの冷んやりとした空気。


「お父さん、お母さん。

ありがとう。

行ってきまーす。」


「行ってらっしゃーい。」

「頑張れよー。」


ルナはパリへ。


「あぁ、昨夜は遅くまでかかったな。」


「本当よ。

あなたがアフリカで作ったチョコレートを再現しようなんて言い出すから。」

「まぁ、実際やってみないとな。

言葉だけではわからないものだよ。」


エルアンはカカオ豆を太陽にかざす。


「久しぶりに触ったな。」

「良い香りだったわ〜。

豆をローストした時。」


エルアンは少し目を細める。


「……あの時も、まだ粗かった。」


カカオ豆をポケットにしまう。


「それにしても、ルナはちゃんと勉強してるんだな。

冷却のために、アルコールを使うって。

私にはその発想がなかった。」

「アフリカでも昔からお酒は作られているのよね。」

「あぁ、現地で調達できる。」


「昔からあるものを使ってチョコレートを作るために、現代の知恵を使う。

なんだか、すごいことに挑戦してるわね。」

「...そうだね、本当に。

素晴らしい挑戦だ。」



「あ、ルナー!おはよー!」


マナ。

ぶんぶんと手を振っている。


「おふあよう〜。」

細い目でマナを見る。

「……コルル。」


「なんだか、眠たそうね。

また根詰めすぎちゃったのー?」

「…んー、うん。

実家でね、お父さんにね、教えてもらってたんだー。」


「え、お父さんに?なになに、ワインのこと?

ルナのお父さんて、なんかかっこいいよねー。

大人の魅力ってやつ?

あたし、ああいう人憧れちゃうなー。」


「…んー、そかな。

そかも。」



実習室。


「おっ。

ルナマナー、おはよー。」

「おはようございます。

ルナさん、マナさん。」


ハンチング帽。

ローラン。


黒髪ショート。

レオン。


「あんた、本当に馴れ馴れしいわね。

ルナマナって何よ。

くっつけないでよ!」

「ん?嫌なのか?お前らユニットだろ?」


「なんのユニットよっ。」

「…んーと、アイドル?」


「違うわよっ。

そんなユニット組んでいないし、目指してもないっ!

…まぁ、でも悪く無いわね。

ルナとならありかも?

スタイル抜群。

金髪ロング。

青い瞳。

透き通るような肌。

もう、どう見たってスカウトが放って置かないくらいの美形だもんねー。

映画のヒロインみたい。」


「ルナさんはとても素敵な女性デス。」

「そうそう、ルナはな。」


「あんたたち、何か言いたげね。」


ローランは腕時計を見る。

「あー、さて、そろそろ準備始めないとな。

えーと、砂糖、塩、ココアパウダー…」


「僕は器材の準備と、レシピの確認をします。」

レオンが微笑む。

「マナさんも、とても素敵デス。」


マナはきょとんとする。

少し頬が染まる。


「…ふん、取って付けたわね。

レオンもイケメンで礼儀正しいからモテモテでしょうに。」


ルナはボーッとしている。


「ルナー、私たちも準備するわよ。」

「……コルル。」


「あ、またなんか変な声漏れてるわ。

えーと、あれ?

粉糖足りないかも。

ねえ、ローラン、粉糖ちょっと分けてくれない?」


「あー?ちょっと待ってろ。」

小皿に盛る。

「ほら、これ。」

「ありがと、助かるっ。」


レオンがマナを見ている。


「…え?何、レオン?

あたしの顔に何かついてる?

そんなに見つめて…」


マナは少しうつむく。

手元の粉を指でかき混ぜる。

口に運ぶ。


「…」


「ぺっ!しょっぱい!何よこれ!」


「それ重曹デス。」


「早く言ってよ!」



ガララ。


実習室の扉が開く。


講師のサラ。


「皆さん、実習の前に。

以前お話ししたコンペティション、もうすぐ締め切りだから参加するなら早くしてね。」


「サラサラ、先生!」

「はい、マナさん。」


「実習室、コンペのために使いたいんですけど。

放課後とか、朝とか。」


「あ、そうね。

使用許可を頂いておくわね。

マナさん良い結果を期待していますね。」

「まぁ、私というよりも、ルナですけどね。

あとレオンも。」


ルナは黙っている。


「おれも申し込んでるぞー。」

「え?ローランも申し込んだの?あんた、ちゃんと作れる?」


「おいこら、オレだって作れるっての。

まぁでも作る方じゃなくて、コンセプト部門で、だけどな。」

「あぁ、完成品部門とは別に、確かあったわね。」


「ローラン君も、頑張ってくださいね。

今回のコンペは話題性があるから、チャンスだと思うわ。

えーと、ルナさんは元気がないみたいね。

...大丈夫?」


ルナの手元を見る。


「ルナ、昨日、頑張りすぎたみたい。

実家でコンペのためのチョコ作ってて、今朝帰って来たって。」

「そうなの?あまり無理しないで欲しいけど…

実習室の使用はすぐに許可を取りますね。」



放課後。


実習室。


「今日のところは、午後六時までね。

私は隣の控室にいるから、何かあったら言ってね。」


「サラサラありがとう〜。」


ローランは実習室の外。

廊下を歩いている。

右手は口元。

左手は右肘。


「ルナさん、頑張っています。」

「レオン、あなたも頑張っているじゃない。」


「マナさん、一勝一敗デス。

今度のコンペは、僕が勝ちます。」


ルナは、まだ動かない。

実習室の隅。


「うーん、ルナってやっぱりミステリアスよねー。」

「……」

「入学したばかりの頃、スイーツと会話する謎の女子って言われてたし。」


カタン。

ルナが立ち上がる。


「あ、ルナ?

ごめん、聞こえちゃった?

別に悪口じゃないから…」


「カカオ豆、ロッカーに取りに行ってくるね。」


「あ、うん。

行ってらっしゃい。」


ガララ、ピシャ。


「…え?カカオ、豆?

豆から作るの?」


「ビーントゥバー。

ルナさん、さすがです。

世界の潮流に乗っています。

感じ取っています。」



フライパン。


テラコッタの浅い鉢。


丸い石。


小さな石板、二枚。


石の棒、四本。


カカオ豆。


グラニュー糖。


トング、大一本、小一本。


かご。


はかり。


温度計。


アルコール消毒液。


ペーパータオル。


ふきん、三枚。


ゴム手袋。



器材と食材が並ぶ。


「お、始まるようだな。」

「あら、あなたも来たのね。」


ローランとサラ。


ルナは無言で動く。


シュッ。

アルコールを吹きかける。

石板と石の棒。


サッサッ。

ペーパーで拭う。


チッチッチッ、ボッ。

フライパンを火にかける。


グラニュー糖。

加熱。


テラコッタの鉢。

火のそば。


石板と石棒を組む。


細く垂らす。

透明の液。


固まり始める。

透明の膜。


「……つきー。」


「……」


「出たわね、ルナの謎の言葉。

ローラン、何なのあれ。」


「…さっぱりわからん。」


サッ。

ペーパータオル一枚。

フライパンの表面を拭う。


火にかける。

弱火。

カカオ豆を鍋に入れる。


パチ、パチ。

カカオのロースト香。


ルナは目を閉じる。

「…フクルル〜。」


「……」


「また出たわよ、謎の言葉。」

「いつものルナさんデス。」

「集中しているのね。」

「…オレ、なんかわかってきた気がする。」


「え?」

三人の声が重なる。


「…いや、まだはっきりとは…」


カララ。


ローストしたカカオを移す。

ペーパータオルを敷いたかご。


テラコッタの鉢も移動。


カカオ豆を開く。

ニブを取り出す。


鉢に入れる。

丸い石で砕く。


ザラザラ。

擦る。


重くなる。

粘る。


光る。


「…コ。」


固まりかけの砂糖。

その上に置く。


カカオ。


押す。

手袋をした指。

広げる。


層ができる。

黒。

その下に透明。


石で組んだ型の上。

もう一枚、石板。


シュッ、シュッ…


アルコールを吹く。



ルナは待つ。


四人も待つ。



型を外す。

持ち上げる。


目線の高さ。

ぐるーっと、回す。

上面と底面も見る。


目を閉じる。


「…ふくー。」


ローランが近づく。

目を閉じる。

「…ふくー。」


「…ふくー、ふくー。」


「あ、あれ?ローランもなんか言い出してる。

あんた、大丈夫!?」


「あぁ、わかった。

これは、ふくいくだ。」



パキッ。


少し軽い音。


ルナは一瞬、止まる。


指先。

少しだけ、崩れる。


目を閉じる。

「……コ。」


ルナの肩が下がり、体が緩む。

「……ちがう。」


「……え?今の、できたんじゃないの?」


ローランは腕時計に目を遣る。

「砂糖じゃ、香りは立たねぇな。」


レオンは右手で顎に触れる。


「ルナさん、失敗なのね。

でもそれがわかったなら、次はどうするか、よね。」


ルナは少し黙る。

指先で、割れた断面をなぞる。

「……つながってない。」


ルナはサラを見る。

「…うん。

サラサラ先生。」


お団子をほどく。


「次もまた、挑戦する!」

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