第十六話 続く道のり
カイとアヤンダ。
アヤンダの腕が伸びる。
カイの肩と、スマートフォン。
…カシャ。
⸻
ブルン、ブルル…
カイがバスのドアを閉める。
アヤンダがバスを走らせる。
バスを見送る。
⸻
都会のビルが立ち並ぶ、賑やかな通り。
カイはバス停の前に立っている。
照りつける日の光が、足元にだけ影をつくる。
通りの向こうを、子供が歩く。
⸻
裸足。
頭の上には、高く積んだバゲットの籠。
右手に木の枝の杖、左手に新聞紙の束。
胸を張って、堂々と。
⸻
カイは背筋を伸ばす。
歩き始める。
一歩。
溝のないスニーカーの底。
⸻
通りを進む。
人の波を縫いながら。
鳴り止まないクラクション。
どこからともなく聞こえる人の声。
⸻
『人材派遣』
受付カウンターの前のカイ。
書類を見る担当者。
深くお辞儀をするカイ。
⸻
担当者が優しく尋ねる。
これからどうするのか、と。
カイは恥ずかしそうに答える。
カカオを作り、チョコレートも作りたい、と。
⸻
カイの携帯が鳴る。
カシャ。
担当者とカイが並ぶ。
その向かいに携帯をもつ職員。
⸻
建物を出るカイ。
軽い足取りで通りを歩く。
立ち止まって標識を見る。
左に曲がる。
⸻
『ビール工場』
事務所に入る。
しばらくして出てくる。
辺りを見回す。
⸻
木の下で昼飯を食べているヤオ。
ヤオが叫ぶ。
周りから集まる人。
カイを囲む。
⸻
カイの肩に触れる者、手を握る者、帽子を掴む者。
ヤオはカイの前で片足をあげ、両手をパーにしている。
やがて皆が横一列に並ぶ。
カシャ。
⸻
手を振りながら立ち去るカイ。
立ち止まり携帯を見る。
太陽の位置を確認する。
また歩き出す。
⸻
ゴー…ゴン、キーン。
『機械工場』の大きな金属音。
作業を中断して並ぶ人。
カシャ。
⸻
『建設現場』
ガガガ、ドルルル。
現場監督とカイ。
カシャ。
⸻
『レストラン』
カシャ。
『スーパーマーケット』
カシャ。
⸻
カイは歩く。
右に曲がり、左に曲がり、また右に…
やがて、雨が降る。
土砂降り。
⸻
カフェの前で雨宿り。
カフェの客がカイを呼ぶ。
首を傾げながらカイは店に入る。
男がカイの前に立つ。
⸻
踵を上げて、後ろにスーっと滑る。
足がもつれる。
慌ててカイが支える。
二人は笑う。
⸻
雨が止む。
カイはお辞儀をする。
店を出る。
店の中で男が手を振っている。
⸻
ブルル。
カイのポケットで携帯が震える。
画面を見る。
電話をかける。
⸻
パー、パー、ブー、ブー。
車が真っ直ぐ並ぶ大通り。
早足に歩く。
ビルの中、事務所の前まで。
⸻
『カカオ栽培支援チーム』
深くお辞儀するカイ。
右手を差し出すリーダー。
両手で応えるカイ。
⸻
街並みが赤く染まる。
暗くなるビルの谷間。
南からの風。
カイは正面で受ける。
ひるまずに歩いて行く。
右側の教会で鐘が鳴る。
ガラーン、ガラーン。
歓声が上がる。
花びらが舞う。
カイは一瞬立ち止まる。
だが、歩く。
左へ曲がり、歩く。
足が少し重くなる。
振り返る。
また前を向き、歩く。
目の前に、月。
大きい金色。
足早になる。
また立ち止まる。
水たまり。
カイは足を揃える。
大きくまたぐ。
水たまりが揺れる。
カイの背中が映る。
次第に小さくなる。
柔らかい風が水を撫でる。
深い紺色の上。
金色の輝きが揺れる。
ゆら、ゆら。
霧笛が鳴る。
ボー。
街の喧騒をかき消していく。




