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navy moon ー月はいつも丸いー  作者: A.O.C.DESIGN
第三章 Plat principal 収穫のあじわい
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第十話 オアシス

貨物船が出発する。

大きな音。


ボー。


響く。

耳に、顔に、胸に。

積荷を降ろすクレーンの音まで掻き消す。


港。


「うっ。お、重いー。何が乗っているんだ。」

ハンドリフトのハンドルを後ろ手に、全体重で引っ張る。


額が地面すれすれ。

作業靴が脱げそう。

だが、進んではいる。


ウイーン。


フォークリフトが横を通過する。

「ははっ、頑張れー。」


アブドゥの声援。

それは嬉しい。

だが、重い。


「ハッ、ハッ、ハッ。」

(キツイな、今日は特に。腕も膝も、パンパンだ。)



「お疲れさん!」

「おつかれー。」

「また明日ー。」


カイは帽子を脱いで、腕で汗を拭う。

(終わった。港の仕事は今日がラストだ。)


「カイ、今日までだったよな。また飲みに行こう。」

「あぁ、そうしよう。」



酒場『Oasis』。


店内を見回す二人。

すでにテーブルは埋まっている。


「カウンターでいいか。」

「あぁ。」


(カウンター、かっこいいな。

ボトルやら、道具やら、キレイに並んでる。)


「乾杯!」

ガチン!


「次の仕事、何するんだ?」

「明日から一週間、ビール工場。」

「お、それも面白そうだな。」

「やることは同じだよ。積荷を動かすだけ。」

「そうか、でもお前、ハンドリフトの扱い上手くなったよな。」

「ん?そうか?まぁ、同じことの繰り返しだからな。慣れたんだよ。」


(慣れてる人の動きを盗んだんだよ。それと、筋肉がついたな。)


アブドゥの言葉に顔が緩む。

港の仕事は結局、一ヶ月続けた。


「カイがいなくなって、オレも明日はハンドリフトだな。」

「嫌なのか?」

「んー、そう言うわけじゃねぇな、嫌いじゃねぇよ。」


アブドゥがキョロキョロする。


「どうした?」

「ん、何でもない。」


カイもキョロキョロする。


アブドゥが呟く。

「今日は来ねぇか。」


(....あぁ、そうか。)


アヤンダ。

都会の女性。

ここで数回会った。


カカオの仕入れ。

ビーントゥバー。

チョコレート。



「オレは、さ、仕事は何でもいいと思えてきた。この街に来て。」


アブドゥが両手を組む。

頭の後。

続けて言う。


「アメフト、やりたかったな。」

「アメフト?」

「子供の頃の夢だ。」

「へぇ、そうだったのか。」


意外だった。

将来の夢。

子供の頃の。


「考えたことないな、夢。」

「めずらしいな。ずっと畑で良かったのか?」

「あぁ。父のようになりたいと思っていたからな。」

「そうか....。

いや、でも確かに、クアメさんはすごいと、オレも思う。」


アブドゥは腕を組む。


「あの畑はいつもダントツだった。それは、クアメさんのおかげだよ。」


カイはアブドゥに顔を向ける。

胸が少し、締まる。



帰り道。


畑を思い出す。

シェードツリー。

マチェーテ。

豆の匂い。


空を見上げる。

飛行機の灯。


どこへ。


ポケットから携帯を取り出す。

母へ送る。


|父さん、元気にしてる?


送信。


返信を待つ。


ボー。


遠くで霧笛がなる。

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