表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/20

19:ずっと夢見ていたんだ

 



 ジルとともに過ごす日々は、物凄くのんびりとしていたのに、すぐに二ヵ月が経ってしまった。


 ドレスはオフショルダーのAラインドレスで、たっぷりとレースが使われたものが、出来上がった。

 そして、結婚式の準備も完璧に終わっていた。

 ジルと何回も話し合いながら細部までこだわり、招待客たちの席次や経歴の確認もしっかりと終えている。


 ジルは毎日のように、国のことでの会議や視察を行っている。その間で結婚式の準備も手伝ってくれていた。それなのに毎晩私の部屋に来て、私の世話を焼く。 


「ビアンカ、何飲む?」

「うーん、冷たくて酸っぱい系がいいな」

「ん、はちみつも少し入れようか?」

「うん!」


 はちみつレモンジュースをジルから受け取りつつ、今日あったことの話をする。


「アンドリューがまた脚本を書いたらしい」

「んえぇ? もう?」

「世に出す前にチェックする?」


 こんな会話が毎晩だ。

 ジルはいったいいつ休んでいるんだろう。




 結婚式の前日にお父様が来てくれた。


 お父様から、お姉様は子育てが、お兄様はお父様が出席したからという理由で来られないと言われた。

 その代わりにと、たくさんのプレゼントが届いた。


 ジルが以前、帝国はプレゼントの送り合いが文化として根付いているねと言っていた。

 そういえば他の国ではあまり見ない風習かもしれない。


「うん、特に変わりはなさそうだね。不自由は?」

「特にないですよ。侍従が一人増えた、という感覚ですね」

「ふははは! ジルベルトは相変わらずのようだな」

「はい」


 ジルはいつまでわたしの侍従で居るつもりなんだろうとは思うものの、それはそれで居心地のいい空気なので、何にも言えない。




 当日朝は、早朝からドレスを着るための準備を始め、お昼前にやっとこさ完成。

 

 結婚式では、お父様にエスコートされバージンロードを歩く。

 祭壇の前には、国王の正装に身を包んだジルが破顔して待ってくれていた。

 お父様の手からジルの手へ。エスコートされていた私の左手が渡された。


 お互いに誓いの言葉を贈り合った。

 ジルは、私という家族を手に入れられて、本当に幸せだと。

 私は、幼いころから側にいて支えてくれたジルに感謝と、これからは私が支えると約束した。


「では、誓いのキスを」


 ジルにベールを捲られ、ゆっくりとキス。

 盛大な歓声と拍手に包まれて、私たちの結婚式は無事に終了した。 


 結婚式後の夜会は、立食形式でおしゃべりがメインのものだったけれど、ボールルームも開かれていた。


「ビアンカ、踊ってくれる?」


 ジルに手を差し伸べられて、そこに自身の手を重ねた。

 流れている曲はゆっくりとしたもので、体が密着するからなのか、変に緊張してしまっている。

 何曲か踊ったあとは、参列者たち一人一人に声かけして感謝の念を伝えて回った。


「そろそろ、部屋に戻ろうか?」

「っ、うん」


 ある程度の挨拶と程よい雑談が済んだところで、ジルに耳もとでそう囁かれて、顔が真っ赤になってしまった。


 会場の出口で挨拶をし、退場。

 夜会は夜明けまで行われるのが通例だけど、結婚式の場合は主賓が退場したら、すぐに閉会されるのだとか。ただ、二次会のようなものは行われるらしく、そちらでは皆しっとりとお酒を飲むだけらしい。

 そんな話を聞きながら、私室に戻った。




 私の部屋はジルの二つ隣で、間にあるのが主寝室だと教えられた。そして、今から使うのはその主寝室。つまり、初夜。


 ドレスを脱ぎ、侍女たちに揉みくちゃに洗われ、香油を擦り込まれ、可愛らしい防御力の少なそうな夜着を着せられた。

 艶々のプルプル肌で主寝室に入ると、大きなベッドにぽつんとジルが座っていた。

 

「お待たせ」

「ん、綺麗。もっと見せて」


 そう言われるとまんざらでもなく、ジルの目の前でくるり一回転してみせた。

 


 ◇◇◇◇◇

 


 目が覚めると、ジルと抱きしめ合っていた。

 どうやらジルはすでに起きていたらしく、おはようと言いながら、額にキスをくれた。


「おはよう、ジル」

「ん。ずっと夢見ていたんだ」


 腕の中に私がいて、お互いに微笑み合って、愛を囁いて、キス。それを夢見ていたらしい。

 そして、きっと死んでもいいくらいに幸せな気分だろうと想像していたのだという。


「実現してみて、どう?」

「間違っていた」


 ジル曰く、もったいなくて死ねない。あと百年はこうしていたいらしい。

 その言葉があまりにも可愛くて、夢を実現させてあげないと……という気分になってくる。


「ジル」

「ん?」

「愛してるわ。キスして?」

「っ――――!」


 ジルが目を見開いて固まって、顔を真っ赤にして、私に覆いかぶさって……と、なんだか忙しそうだ。


 ジルは今日明日と休んで、明後日から執務に戻るとのことで、残り二日で全力でいちゃいちゃして、全力で私のお世話をしたいのだとか。

 なぜそこに私のお世話が入るのか分からないけれど、ジルの好きなようにさせてあげることにした。

 だって、私のお世話をしている時のジルって、本当に生き生きとしていて、幸せそうに微笑んでいるから。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ