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第50話『継承の証と深淵の影』

 アステロニア=ゼロの地表に、星の夜明けが訪れる。

 だが、その静寂は、これから始まる新たな嵐の前触れにすぎなかった。


《主権継承プロトコル、第二フェーズ完了》

《銀河標準における主権者認証セクション、更新》


 ナビスのシステム音声が、朔夜たちの前で淡々と響く。

 それは、この星が正式に「誰かの支配下に入った」ことを意味していた。


「……これで、俺たちは本当に名乗りを上げたわけか」


 朔夜が低く呟く。

 彼の胸には、銀河の重圧と同時に、確かな責任が宿っていた。




 仮設ドームの中では、簡素ながらも厳粛な「継承宣言式」が執り行われていた。

 ゼロスが主導し、ナビスが手順を補佐する形で、銀河標準プロトコルに基づく正統手続きを再現していた。


「アマギ・サクヤ殿」


 ゼロスが儀礼用のシグネットを差し出す。

 それは古代銀河連合時代から続く、主権者の象徴だった。


「あなたはこの星、アステロニア=ゼロにおいて唯一の継承権を有する者と認められました。いまここに、旗印を掲げ、意志を示す義務を負う者として──宣誓を」


 朔夜は短く息を吸い、そして宣言する。


「俺は、この星のすべての存在を、力ではなく、意志によって守る。

 過去に縛られることなく、未来へと歩むために」


 その言葉が、仮設ドームに静かに響いた。

 そして、ナビスが宣言する。


《記録完了──主権登録完了。アステロニア=ゼロ、新主権者アマギ・サクヤ認証》


 これが、銀河における正式な名乗りだった。




 式典の終了と同時に、各勢力の動きも加速する。


《宙商族連合より経済支援プラン提案到来》

《セラフィエル聖制帝国より非公式抗議声明受領》

《第三貴族連合、観測団派遣準備中》


「始まったな……」


 朔夜は、連続で届く通信ログを見ながら小さく呟く。


「これからは、“中立”であることすら、言葉だけでは済まされない」


 リィナが厳しい表情で続ける。


「セラフィエルは、今後確実に“異端の星”として名指ししてくるでしょう」

「宙商族連合は、表向きは支援だろうが、内心は新しい交易拠点を確保したいだけ」


 ゼロスが淡々とまとめた。


 そして、そんななかでも、次の問題が浮上する。



「……放棄民への接触、そろそろ始めるべきだな」


 朔夜はナビスに指示を出す。


 北東12キロ地点に存在する微弱な生体反応──

 それは、銀河文明の崩壊後もこの惑星で生き延びた、適応変異型人類群である可能性が高かった。


 リィナが選抜した探索班が、慎重に接触を開始する準備を整えていた。


「ただし、無理な接触はしない。あくまで“共存”が前提だ」


 朔夜は繰り返し念を押した。



 だが、その最中──


《警告:エルグラード・ノード内部にて、未登録信号を検出》


 ナビスが急報する。


「未登録……?」


 ゼロスが眉をひそめる。


「封印領域……第零層だ。通常の継承プロトコルでは開示されない、最下層」


「中に、何が?」


「未知だ」


 冷たい答えだった。



 地下第5層。


 封印されたゲートが、朔夜たちの前に姿を現す。

 それは、今までの遺構とは明らかに異なる雰囲気を放っていた。


 扉には、銀河標準では解読不能な古代文字列が刻まれている。

 ナビスですら、全解読には至らない。


《推定意訳──『禁断ノ起源 触レシ者ハ運命ヲ選ブ』》


 ゼロスが呟く。


「ここは、本来、誰にも開かれるべきではなかった場所だ」


 だが、朔夜は迷わなかった。


「この星を守るためなら──何があろうと、受け止める」


 そして、ゲートは静かに開き始めた。




《記録更新:アステロニア=ゼロ 主権継承段階 第三フェーズ移行》


 その瞬間、星と銀河の運命が、またひとつ、大きく動き始めた。



《ログ:読了ありがとうございます》


感想やブックマークは、物語の“銀河航路”を確定させる大切な観測点です。

あなたの感じたことが、次の物語の推進力になります──ぜひ一言でも届けてください。


また、更新情報や制作の裏話はX(@hiragiyomi)でも発信中です。

フォローしてもらえると、ナビスも喜びます。


《次回座標、設定中……》

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