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第49話『静かなる侵食と目覚めの座標』


 アステロニア=ゼロの空は澄み渡っていた。

 だが、静けさの裏に潜む微かな異変を、誰もがまだ知らなかった。


《報告。惑星磁場に微弱な歪曲波を検出。異常座標展開の兆候あり》


 ナビスの冷静な声が、艦橋に響く。

 ボイドクラウドを退けた直後の、わずかな安堵の空気が引き締まった。


「歪曲座標……また厄介な話だな」


 朔夜はモニターに目を凝らす。

 異常座標は、惑星地下の《エルグラード・ノード》付近を中心に拡大していた。


 ゼロスが端末を操作しながら呟く。


「この波動パターン、間違いない。遺構内部に封じられていた“深層領域”が目覚めつつある」


「……内部調査を急ぐ」


 朔夜は即座に指示を出した。



 地下第4層、封印区画入口。


 厚い封鎖扉が、主権コードに反応して静かに解錠される。

 中から吹き出した空気は、ひどく冷たく、古い匂いがした。


「ここが……」


 リィナが思わず息を呑む。


 内部には、朽ちかけた階層型の制御装置群と、中央に鎮座する巨大なコアユニットがあった。

 それは心臓のように脈動しており、ナビスの光学解析にも反応を返してくる。


《主権コード反応を検出。該当:アマギ・サクヤ》


 その瞬間、空間に淡く文字列が浮かび上がった。


> "主制御中枢プロトコル再起動──承認待機中"


「認証を……求めている?」


 ゼロスが頷く。


「はい。継承者の意志が問われているのです。ここで応じれば、遺構は完全に君の支配下に入る」


「だが同時に……」


「眠っていたものも、目覚めるでしょう」


 リィナが緊張した面持ちで口を挟む。


「ここに何が眠っているの?」


 ゼロスは静かに答えた。


「──超古代兵器群。かつて銀河連合すら完全に制御できず、封印せざるを得なかったものたち」


 重い沈黙。


 朔夜は考える。


(支配か、放棄か。星を守るために、どちらが正しい……?)


 ──だが、選ばなければならない。


 彼は静かに、手を伸ばした。


「認証──アマギ・サクヤ。継承者として、応答する」


 光が中枢全体を包み込んだ。



 同時刻、惑星軌道上──


《新たな航跡検出。銀河外縁から、セラフィエル聖制帝国の第七観測艦隊が接近中》


《さらに、連合外交使節団の別働隊も惑星周辺宙域に侵入》


 ナビスが淡々と報告する。


「……来たか」


 朔夜は静かに拳を握った。


 星の“変化”を、銀河は敏感に嗅ぎ取っていた。

 だからこそ、彼らは干渉を始めるのだ。


 宗教の名のもとに。

 交易の名のもとに。


 だが、朔夜は知っている。


 この星は、もう誰にも譲れない場所なのだ。



 《記録更新:アステロニア=ゼロ 主権継承段階 第二フェーズ進行》


 ──形式的な支配権を得ただけだった初期段階から一歩進み、

 朔夜は今、星そのものの制御権──古代ネットワークと深層機構への接続権をも掌握し始めていた。


 これにより、単なる拠点保持者ではなく、

 “惑星の正統継承者”として銀河における影響力を持つ存在となった。


 新たな銀河の波乱が、静かに幕を開けようとしている。



第二フェーズ進んだ..

《ログ:読了ありがとうございます》


感想やブックマークは、物語の“銀河航路”を確定させる大切な観測点です。

あなたの感じたことが、次の物語の推進力になります──ぜひ一言でも届けてください。


また、更新情報や制作の裏話はX(@hiragiyomi)でも発信中です。

フォローしてもらえると、ナビスも喜びます。


《次回座標、設定中……》

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