第47話『虚空の侵食者』
予約投稿の日付が間違えてた..
今日の7時の分です...
ボイドクラウドが迫る。
艦橋に響くナビスの警報音が、緊張の糸をさらに張り詰めさせた。
《警告:侵食領域拡大中。直径──12,000km規模。臨界活性化確認》
アストラ・ヴェールのセンサーに映るのは、夜空を覆い尽くすような黒い雲。その内部で蠢く不規則な波動は、明らかに自然現象ではなかった。
「動きが……読めない」
リィナが、モニターを見ながら小さく呻く。
「ゼロス、対策はあるか?」
「正面から撃ち抜けば、跳ね返されるだけだ。……だが、中心核さえ封じれば、広がりを止められるかもしれない」
朔夜は一瞬だけ目を閉じ、そして静かに操縦席に腰を沈めた。
「なら──狙うしかない」
アストラ・ヴェールが唸りを上げる。
高出力モードへ移行し、機体の外殻が微かに青白い輝きを帯びる。
《主砲カノンライナー、収束完了。補助ユニット《レクティア》連動起動》
「リィナ、補助索敵。ゼロス、侵食波動パターンを解析して最短ルートを割り出してくれ」
「了解!」
「応答、即時開始!」
艦内に流れる空気が、一変する。
これはただの戦闘ではない。 星を守るための、絶対に引けない一撃だ。
*
アストラ・ヴェールの主砲が、銀河の闇を貫くように光を放った。
収束した粒子ビームは、ボイドクラウドの中心部へ一直線に突き進む。
《命中確認──しかし、侵食波動拡散。中心核への影響は限定的》
「やっぱり、簡単にはいかないか……!」
朔夜は歯を食いしばった。
触れた粒子すら飲み込むかのような“虚空”そのもの──攻撃の余波が、周囲の大気に歪みを生じさせ、雷光にも似た放電が迸る。
「第二波、準備できるか!」
《推奨:波動干渉領域に適応するための位相シフト弾頭使用》
「位相シフト弾頭、装填! 次で仕留める!」
リィナが叫ぶ。
「侵食中心──座標微調整! 偏差修正完了!」
「撃て──!]
第二射。
白銀に煌めく軌跡が、異なる波長で虚空を切り裂いた。
──そして。
《中心核活動停止を確認。侵食拡大停止》
ナビスの報告に、艦橋にいた全員が息を呑む。
だが、安心するにはまだ早かった。
《警告:周囲に残留波動反応。クラウドの一部が独自に自己増殖を試みています》
「……群体型か」
ゼロスが低く呟く。
「中心核を潰しても、完全な殲滅にはならない。細胞単位で自律行動する……最悪のパターンだ」
「じゃあ、どうすれば……?」
リィナが顔をしかめる。
朔夜は短く思考を巡らせ、静かに答えた。
「殲滅じゃない。封じる」
「ナビス、旧銀河連合規格の封印プロトコル、使えるか?」
《一部互換可能。緊急封鎖モード、展開可能です》
「座標を固定。封鎖領域を設定して、クラウド残滓ごと閉じ込めろ!」
《実行──封印フィールド展開》
アストラ・ヴェールから放たれた光子ネットが、空間を縫うように編成され、ボイドクラウドの残滓を取り囲んでいく。
星の夜空に、網の目のような光の檻が出現した。
そして、静かに──虚空の侵食は、封じられた。
*
戦いを終えた後、朔夜たちは艦橋に集まっていた。
「……終わったの?」
リィナの声に、朔夜は頷く。
「ああ。とりあえずな」
ゼロスが補足する。
「だが、あれは“兆し”だ。銀河の深層では、もっと大きなものが蠢いている」
「なら、備えるしかない」
朔夜は拳を握りしめた。
星を、仲間を、未来を守るために。 この旗を掲げ続けるために──
夜明け前の星空に、アストラ・ヴェールは静かに航行を続けていた。
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《次回座標、設定中……》