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第46話『星継ぐ者たち』

 アステロニア=ゼロの朝は、異様な静けさに包まれていた。

 昨日交わされたアグラヴェインからの通信が、基地内の空気を張り詰めさせていた。


 仮設司令塔では、ナビスが新たな解析結果を提示していた。


《主権波形の揺らぎは、局所的現象に留まっています。しかし、周辺宙域では未確認ノードの活性化が複数観測されました》


「つまり、銀河のあちこちで……目覚め始めているってことか」


 朔夜の言葉に、ゼロスが静かに頷く。


「はい。かつての“主権者たち”の記憶、意志の残滓が、この時代に再び動き出しているのです」


 リィナが腕を組み、少し考え込む。


「それだけじゃない。アグラヴェインの行動は、単なる独立じゃない……星系間支配を目論んでる」


「放っておけば、銀河に新たな戦乱を呼び込むことになる」


 朔夜はディスプレイに映る星図を睨みつけた。

 まだ拠点も生活圏も十分に整っていない今、正面衝突は最悪の選択肢だった。



 一方、リセリア率いる《カナリアの枝》の住民たちは、徐々に仮設基地への交流を深め始めていた。


 作業区画では、彼らが手伝いに加わり、採掘ドローンのメンテナンスや居住棟建設に協力していた。


「あなたたちの技術は……私たちが失ったもの」


 リセリアは朔夜にそう告げた。


「でも、私たちにも残っている。星と共に生きる知恵が」


「なら、教えてくれ。この星をどうすれば、無理なく生かせるか」


 互いの知識が交わり、アステロニア=ゼロに“新たな文明”の芽が育ち始めていた。



 だが、その穏やかな時間は長くは続かなかった。


 ナビスが緊急警報を鳴らす。


《高エネルギー波検出。アステロニア星系外縁にて、質量異常を伴う時空撓み発生!》


「何が来る!?」


《推定──ボイドクラウド。外縁部より星系内へ侵入中》


 朔夜は即座に判断を下す。


「迎撃準備!アストラ・ヴェール、稼働体勢に入れ!」



 あの艦──神機と呼ばれたアストラ・ヴェール。

 未だ真の力を完全に解放したわけではない。

 だが、今この瞬間、この星を守るために必要なのは、まさにその存在だった。



 夜空を染める闇の雲、ボイドクラウド。

 それは単なる自然現象ではない。意志を持つかのように、惑星の磁場を歪め、軌道上の衛星を次々と飲み込んでいった。


「ただの現象じゃない……これは、意志を持ってる」


 リィナが震える声で呟く。


「ゼロス、何か知ってるか?」


「ボイドクラウド……銀河連合時代にも記録が僅かにある。異次元境界から漏れ出した“存在”の断片。下手に攻撃すれば、逆に呼び込む可能性も」


「……なら、封じるしかない」


 朔夜は艦橋に座り、アストラ・ヴェールの制御パネルに手を置く。


 星を、守るために。

 旗を掲げたこの地を、誰にも穢させないために。


「行くぞ──アストラ・ヴェール」


 銀河に、新たな戦いの火が灯り始めた。



《ログ:読了ありがとうございます》


感想やブックマークは、物語の“銀河航路”を確定させる大切な観測点です。

あなたの感じたことが、次の物語の推進力になります──ぜひ一言でも届けてください。


また、更新情報や制作の裏話はX(@hiragiyomi)でも発信中です。

フォローしてもらえると、ナビスも喜びます。


《次回座標、設定中……》

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