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第45話『星の声と主権の狭間』


 交信を受けた翌朝。

 アステロニア=ゼロの空は、まるで銀河そのものが鼓動するかのような、微細な振動に包まれていた。


 仮設司令塔内では、ナビスによる交信解析結果が報告されていた。


《認識信号“アグラヴェイン・シュラード”は、独自主権コードによる自律領域を確立中。周辺宙域にて未登録ノードの活性化を確認。》


「つまり、あいつも俺たちと同じく、星を継いだってわけか」


 朔夜は腕を組みながら、星図に浮かぶ微弱な主権波形を見つめた。

 リィナが隣で眉をひそめる。


「でも、あまりに“孤立的”すぎる。通信プロトコルも、銀河標準に合わせていない……」


「警戒すべきだな。下手すりゃ“別の銀河秩序”を作る気かもしれない」


 ゼロスが静かに頷く。


「かつて銀河連合が崩壊したのも、主権保持者同士の思想対立が原因の一端でした。注意深く動くべきです。」



 同時に、アステロニア=ゼロ内部でも、動きがあった。


 北東拠点近く──銀河放棄民の末裔と思しき集団が、ついに接触に応じたのだ。

 仮設キャンプ地の外れで、数名の偵察隊と共に、彼らは小さな篝火を囲んでいた。


 代表と見られるのは、褐色の肌に銀髪を持つ、若き女性だった。

 その名はリセリア──放棄民の新興集落《カナリアの枝》を率いるリーダーだという。


「……ここに住まうのは、望んでのことだった。

 だが、あなたたちが来た以上、私たちは自分たちの未来を選びたい。」


 リセリアの言葉は慎重だったが、その眼差しは確かな意志を宿していた。


「強制はしない。だが、共に生きる道もある」


 朔夜の提案に、彼女は小さく頷いた。


「……信じるには、まだ時間が要る。でも……」


 彼女は、空を見上げた。


「あなたたちの“星の声”は、嘘をついていない気がする。」


 小さな一歩だった。

 だがそれは、この惑星で新たな“共存”の種が芽吹いた瞬間だった。



 その夜、基地上空にて異常が発生する。


《警告:主権波形干渉検出。対象──不明ノードより接続試行。》


 緊急コードが鳴り響くなか、ナビスが続けた。


《相手識別:継承者アグラヴェイン・シュラードのサブノード。通信要求:個別認証チャネルにて》


「個別……だと?」


 リィナが警戒を強めるが、朔夜は静かに頷いた。


「受けろ。だが、ナビス、即時遮断できるように待機しておけ」


《了解》


 短く電子ノイズが走った後、モニターに白銀の仮面をつけた男の映像が映し出された。


『アマギ・サクヤ。銀河に選ばれた者よ』


 その声は異様に静かだった。


『我らは交差の道を望まない。だが、避けられぬならば……星と星の間で、血が流れるのみ』


 通信は一方的に打ち切られた。


「……脅しだな」


「でも、宣戦布告でもない」


 朔夜は息を吐き、空を見上げた。


「いずれ、避けられない時が来る。それでも──俺は、この星を守る」


 誰かに従うためでも、誰かに屈するためでもない。

 自分で選び、自分で掴んだこの旗を──もう、手放すつもりはなかった。



 そして、また一つ。

 アステロニア=ゼロに、銀河の運命を決める“波”が押し寄せようとしていた。



《ログ:読了ありがとうございます》


感想やブックマークは、物語の“銀河航路”を確定させる大切な観測点です。

あなたの感じたことが、次の物語の推進力になります──ぜひ一言でも届けてください。


また、更新情報や制作の裏話はX(@hiragiyomi)でも発信中です。

フォローしてもらえると、ナビスも喜びます。


《次回座標、設定中……》

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