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第44話『交差する波紋』

GWもよろしくお願いします

 断層宙域レーン93-βから届いた継承者アグラヴェイン・シュラードの応答。それは、アステロニア=ゼロの基地に新たな緊張感をもたらした。


 仮設ブリーフィングルームでは、ナビスの立体投影によって受信データが詳細に解析されていた。


《受信信号:純感覚波形ベース。主権コード同調度43.7%。敵対意思なし。ただし、明確な友好意思も未検出》


 データの解釈を巡り、朔夜、リィナ、ゼロス、アスファの四人が慎重な議論を重ねていた。


「純感覚波形……言葉も、映像も超えて、“存在の波”だけで交信してきたってわけか」


 朔夜が腕を組みながらつぶやくと、ゼロスが補足した。


「これは非常に高度な意思疎通方法です。銀河連合後期、主権継承者同士でしか用いられなかった形式。通常の言語より誤解が少ないが、意図の“深度”が読み取りにくい」


 リィナは小さくため息をつきながら言った。


「友好か敵対か、判断できないまま交渉するのはリスクが大きいわ」


「でも無視はできない。俺たちは“選ばれただけ”じゃないって、行動で示さなきゃならない」


 朔夜の言葉に、皆が黙ってうなずいた。



 アステロニア=ゼロの地表では、主権波形の影響を受けて、新たな現象が進行していた。


 北西区画に存在した半埋没のシグナル・スパイアが、さらに活性化し始めたのだ。


 アスファが率いる工学班が現地調査を行い、報告をまとめる。


「塔内部のエネルギーコアが再活性化しています。どうやら惑星外との“エネルギー転送リンク”を再構築しようとしているようです」


「外とのリンクって……別の星か?」


「可能性は高いです。衛星スキャンでは、既に星間信号の微弱なパターンが複数検出されています。おそらく、他の“継承地”と無意識下で共振を始めている」


 その分析に、ゼロスが静かに付け加えた。


「この惑星だけが特別なのではない。銀河のあちこちで、“失われた王座”が呼び起こされつつある」



 その夜。

 基地の通信司令塔では、ナビスとアスファが慎重に信号解析を進めていた。


《新たな波形を検出。識別信号なし。だが、明確な“呼びかけ”が存在》


「誰かが……直接、俺たちにアクセスを試みてる?」


《はい。推測ですが、おそらくは──継承者アグラヴェイン本人からの個別交信》


 朔夜は迷わなかった。


「開いてくれ。フィルターだけは最大限に張った状態で」


《了解。通信開放──》


 次の瞬間、基地中に微かな振動が走る。誰かが、直接意識に触れようとするような感覚。


(──アマギ・サクヤ)


 内耳に響くようなその声は、穏やかでありながら、底知れぬ力を秘めていた。


(我らは争うためにあるのではない。だが、もし志が違うなら、必然として道は別れるだろう)


(君は何を望む──この星、この銀河を、どこへ導く?)


 問いかけだけが投げかけられ、返答を要求するものではなかった。


 だが、朔夜は応えた。自らの意志で。


「──俺は、誰にも支配されない場所を作る。この銀河に、自分自身で選び取る自由を残すために」


 静かに、しかし確かな波が返ってきた。


(……ならば、いずれまた会おう。選択の時は、必ず来る)


 通信は、そこで途切れた。



 通信終了後、仮設司令室に静かな空気が流れる。


 リィナがゆっくりと口を開いた。


「本当に……戦う覚悟ができてるの?」


 朔夜は、夜の宇宙に瞬く星々を見上げながら答えた。


「戦いが避けられないなら、覚悟するしかない。でも……できるなら、誰も失いたくない」


 ゼロスが微かに笑った。


「それが、君らしい」


 未来はまだ形を持たない。

 だが、選び取るための一歩は、もう踏み出していた。


 次なる局面──銀河を巡る“選択の星環”の時代が、静かに幕を開けようとしていた。



《ログ:読了ありがとうございます》


感想やブックマークは、物語の“銀河航路”を確定させる大切な観測点です。

あなたの感じたことが、次の物語の推進力になります──ぜひ一言でも届けてください。


また、更新情報や制作の裏話はX(@hiragiyomi)でも発信中です。

フォローしてもらえると、ナビスも喜びます。


《次回座標、設定中……》

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