第43話『星環を巡る選択と兆し』
デシマ=エイトからの帰還後、アステロニア=ゼロの基地では静かだが着実な変化が進行していた。主権波形の強化に伴い、惑星全域のエネルギー循環が最適化され、一部地域では微弱ながら“自律稼働”する古代遺構が目撃されるようになっていた。
仮設ブリーフィングルームでは、朔夜、ゼロス、リィナ、アスファが揃い、ナビスによる最新解析結果が共有されていた。
《主権コードの波形拡張が、惑星軌道外縁まで到達。軌道安定化フィールドの自動展開を確認。加えて、外部ノードとのリンク数は三箇所に増加。》
「ということは、もう“単なる男爵領”の規模じゃないな」
朔夜の言葉に、アスファが頷く。
「はい。この星は今や、一つの“星環圏領域”と見なせるほどの主権波及を獲得しています。帝国なら伯爵、いや、それ以上の権限です」
その報告に、リィナが小さく目を細めた。
「……なら、帝国が動くかもしれない。ここを“再編”してでも手中に収めようと」
「セラフィエルも同じだ。“神託により与えられた聖域”として再占拠を狙ってくるだろう」
ゼロスが静かに口を開いた。
「彼らの動きには、ある“予兆”があります。今、銀河各地にある断層宙域で、同時多発的に古代遺構の覚醒が進行している」
ナビスが補足する。
《該当地点:ケリス断層・ヴァルド宙域・ルドラン重力界・外宙環R-13……それぞれ、主権コードとの波形共鳴を検知》
「“継承者”は……俺だけじゃないってことか」
「そう。そして中には、おそらく──君とは全く違う道を選ぶ者もいる」
*
アステロニア=ゼロの地表では、継承された主権波形の影響により、新たな“自律型構造物”が稼働を始めていた。その一つ、北西区画に存在した半埋没の塔が、微弱な光を放ち始めていた。
現地に赴いたアスファと工学班の報告によれば、塔内部には無人観測端末とエネルギー転送機が格納されており、主権中枢のコアユニットと連動するように設計されているという。
「これは……惑星外部の主権候補地と“電磁的中継”を行うためのノードだ」
ゼロスがその場で分析した結果、構造体は銀河連合時代の“星環リンク網”の一部であり、同様の塔が複数の星で起動し始めている可能性があると示された。
「つまり、他の継承地とも“通信”が可能になるかもしれないってことか」
「はい。ですが、同時に──“敵意”も届く可能性があります」
*
その日の夜。
アステロニア=ゼロ上空の主権監視衛星が、断層宙域方面からの微弱な主権信号を検知した。
《受信波形:認識コード未登録。プロトコル不明。波形一致率34.2%──おそらく、他の継承者》
朔夜は艦橋からの報告を受け、即座にデータを精査させる。
「相手はどこから?」
《断層宙域レーン93-β。“流星断層帯”と呼ばれる不安定宙域。かつて旧銀河連合の“分権拠点”が存在したとされる区域です》
その名に、ゼロスがわずかに動揺を見せた。
「……まさか、“ルイン・アルファ”の記録が、まだ残っていたとは」
“ルイン・アルファ”──それはゼロスの記憶に刻まれた、かつての主の盟友であり、銀河連合内部でも特異な立場にあった存在。
朔夜は決意を込めて言った。
「交信を試みよう。敵か味方かは、まず接触しなきゃ分からない」
「了解しました。通信スキャンチーム、配置します」
*
そして翌日、断層宙域より応答が届く。
それは言語でも映像でもなく、“純粋な感覚の圧”だった。
《主権コード照応反応──認識信号:継承者アグラヴェイン・シュラード。銀河中立波形準拠。》
アスファが読み上げる。
「“アグラヴェイン”……個人識別が可能です。旧連合議会戦略層のデータバンクに記録あり」
リィナが横から補足する。
「つまり、彼も“継承”された者。だがその意図はまだ不明」
通信の最後に、一文だけが届く。
> 貴殿の存在、確認せり。
> 我らは交差するのか、それとも衝突するのか。
> 星の声を、再び聴け。
朔夜は、静かに目を閉じた。
「こっちも、“選ばれただけ”じゃないってこと、見せてやらないとな」
主権継承──それは、ただの政治ではなく、
銀河の“在り方”そのものを決める選択である。
次なる探査と交信は、もう始まっていた。
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《次回座標、設定中……》




