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第21話『銀河に潜む祈りと敵意』

 ナビスの報告によれば、セラフィエル聖制帝国からの“神託使”による接触は、

すでに帝国および第三貴族連合の外交ルートにも情報として流れていた。


 翌朝、カレルス星環の連絡ステーションには、二通の書状が同時に届いていた。

 一通は帝国本庁より。

 一通は第三貴族連合議会から。


 そのどちらも、内容はほぼ同一だった。


《昨夜の訪問者について、貴殿の安全と外交的立場の確認を求める》

《セラフィエル聖制帝国による非公式接触は、銀河外交秩序を揺るがす事態である》


 俺はそれらを読み終え、リィナに渡した。


「……どこも、情報を“共有”しただけで、助ける気はないってことか」


「逆に言えば、“どこもまだ動けない”とも取れます」


 ナビスが補足する。


《セラフィエルは銀河外交において公式な関係を持たず、“聖域”として自治と不可侵を保ってきました。今回の非公式接触は、その秩序の外からの“圧”と見るべきです》


「つまり……“神の声”という名前で、銀河法の外から俺に圧をかけてきたってことか」


 俺は苦笑した。

 戦艦で戦う相手ではない。だが、明確に“敵意”は示された。



 その日の午後。

 イレーナが個人的に連絡を寄越してきた。


《会いたい。できれば、正式な席ではなく、私的に》


 場所は、カレルス星環の市民区にある小さな園庭だった。

 中立星の空気の中に、ゆるやかな花の香りが漂っていた。


「私の知る限り、セラフィエルが“神託使”を表に出すのは、ここ三十年で初めてよ」


 ベンチに座ったイレーナは、いつになく真剣な目で俺を見ていた。


「あなたを脅すためじゃない。彼らは“啓示を確かめる”ために動いたの」


「啓示?」


「そう。“神の名を騙る存在が銀河に現れる”──それが数年前から、一部の巫女の間で語られていた預言」


「……俺がそれに該当する、ってわけか」


「あなたが“偽りの神”なのか、それとも“本物の奇跡”なのか──セラフィエルは、まだ判断を下していない。でも、少なくとも“選別”の対象には入った」


 俺は静かに息を吐いた。


「それで、あなたはどう思ってる?」


 イレーナは少し笑って、立ち上がる。


「私は──あなたが何者であっても、“自分の意志で選んでくれる”限り、信じるわ」


 それは、どんな支援よりも重たい言葉だった。



 アストラ・ヴェールに戻った俺は、ひとつの決断を下していた。


「ナビス、俺たちの領地候補。あの“アステロニア星系”に、調査艦を出してくれ」


《了解。周辺航路の再確認とスキャンを開始します》


「誰かに守られるんじゃなく、自分の地を、自分の手で築く。そのために、まずは……旗を立てる場所を決めなきゃならない」


 宗教国家の視線。

 帝国と連合の静かな圧力。


 だが、俺は今ようやく、この銀河に“自分の始まり”を選ぶところまで来たのだ。


 それは、誰にも預けない意志の証。

 俺は──俺の旗を掲げる。



読んでくださりありがとうございました!


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