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第20話『神託を告げる者』

 外交会談の余波が残るなか、俺たちは迎賓区からカレルス星環の北縁にある研究施設アステリア・ロッジへと一時移動していた。


 そこは表向きには古代遺構の調査基地。だが実際は、各勢力の高官同士が密談や裏交渉に用いる“第三の会場”だ。


 ナビスによると、帝国も連合も、ここでの動きを表立って監視することはできないという。


 リィナは俺の少し後ろを歩きながら、淡々と口を開く。


「会談は表向きは成功ですが、すべてが“保留”になった今、どの勢力も疑念と期待の両方を抱えたまま動けません。静寂は、一番不気味です」


「だからこそ、動いてくるやつがいるってことか」


「ええ。特に、“自分たちの常識で動かない者”には注意を」


 その時、警告音が鳴った。


《来訪者識別不能。正規ID未登録。警備網を回避した形跡あり。》


「誰だ……?」


 研究施設の中庭へと出ると、白い衣を纏った女がひとり、静かに佇んでいた。


 その姿は異様だった。

 銀糸の織り込まれた外套。背には輪のような光の残像。そして、足元を飾るのは宗教国家セラフィエルでしか見られない“聖装”──


「神域からの使いか……?」


 女は目を伏せ、柔らかく口を開いた。


「貴方に、神託を伝えるために来ました」


 俺は構えながらも、声だけは冷静に返す。


「セラフィエルの使節が、こんな形で現れるのか?」


「我らは“聖制”に属しますが、教皇の命にて動く存在ではありません。天に名を持たぬ者へ──審判の予兆を告げる者です」


 それはつまり、非公式な宣告。

 正式な外交ではなく、“神の名を借りた警告”だ。


「言葉を借りる。何を伝えに来た」


「神託は、こう告げました──」


 女は手を広げ、淡く光る魔力の結晶を掌に浮かべた。


「“星無き者が星を汚す時、天より刃が下される。その名は偽りの奇跡。触れてはならぬ神の座を揺るがす者”」


 風が吹いた。

 中庭の花が散り、光が乱反射する。


 俺は、ただ黙って彼女を見ていた。


「アマギ・サクヤ。あなたの存在は、我らにとって脅威であり、また──予兆でもある。貴方の選ぶ未来が、銀河の運命を左右する。その覚悟を」


 彼女は一礼すると、まるで幻のように姿を消した。



 その後、ナビスが警備網を再走査するも、彼女の痕跡は何一つ見つからなかった。


《映像記録・熱源・魔力波動、いずれも“残留無し”──物理的実在すら不確か》


「……幻術、か?」


《いえ。“神託媒体”という可能性も。セラフィエルでは、ごく一部の高適応者が“神域回路”と呼ばれる魔力交信体制に接続されていると噂されています》


 俺は深く息を吐いた。


 ──これで、完全に“見られた”のだ。


 神に代わる視線。

 銀河の“上層”にいるとされる存在からの、最初の注目。


 それが、俺にとっての“初の宣戦布告”だったのかもしれない。



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